JAL・ANA機長が「海外オファーを断った」納得の理由とは(写真はイメージです) Photo:PIXTA
客室乗務員(CA)に続いて、運航乗務員(パイロット)の年収や働き方について取材した。JALやANAの機長に高額報酬の転職オファーが舞い込む実態、それでも日本で働き続けることを選ぶ人もいるワケに迫る。(航空ジャーナリスト 北島幸司)
活況なパイロットのスカウト
年収40万ドル=6300万円も!
航空業界の花形職種、パイロット。その中でも経験を積んだ機長に最近、海外エアラインから驚くような条件のスカウトが届いているという。
「台湾の航空会社から年収4000万~5000万円という条件で勧誘されるケースがある」と明かすのは、JALの機長だ。また別のJAL機長は、「どことは言えないが、年収4000万円に加えて500万円を支度金として支給する条件が提示されたことがあった。実際に外資へ移籍した機長も複数人いる」という。
「米国の大手から40万ドル(6300万円)でスカウトの話があると同僚から聞いた」とANAの機長もこっそり明かした。なお、このようなケースは公開条件ではなく、縁故を通じた個別のオファーがほとんどだ。つまり、水面下で引き抜き合戦が行われているのである。
なぜ海外エアラインは
JAL・ANAパイロットを欲しがるのか
背景には、世界的なパイロット不足がある。航空業界はコロナ禍で未曽有の危機に陥った。一時的に解雇されたパイロットもいた。会社によっては採用や訓練を縮小し、副操縦士のキャリア形成にも空白が生じた。ところが、その後は需要が急回復。パイロットを短期間で確保する必要に迫られている。
さらに、中国やインド、中東では航空会社の新設・拡大が相次いでいる。自社でパイロットを育成しようとしても、経験を積んで機長にするには10年以上かかる。そのため、すでに経験豊富な機長を高額報酬でスカウトする動きが盛んになっている。しかも日本で経験を積んだ機長には、高い報酬を払ってでも獲得したい流れがあるようだ。
一方のJAL・ANAは、1980年代後半のバブル期入社組を含む大量採用世代が高齢化し、2030年前後に退職者のピークが見込まれている。また、ボーイングとエアバスがコックピットや操縦システムの標準化を進めた結果、必要な移行訓練を受ければ、経験豊富な機長なら海外で即戦力として活躍しやすい。これも国際的な流動性を高めている要因だ。
ANA2335万円、JAL2152万円
それでも外資へ転籍は少ない?
ANAとJALの有価証券報告書(2026年3月期)から確認できるパイロットの平均年間給与は、ANAが2335.5万円、JALが2152.7万円。海外エアラインの年俸4000万~6000万円オファーを受ければ、年収は一気に2~3倍に跳ね上がることになる。
にもかかわらず、勧誘された機長はオファーを断ったという。一体なぜなのか。筆者が問うと、年収だけでは転職を決められない切実な事情、高給取りの裏側にある機長の苦労を垣間見ることができた。







