Photo by Yoshihisa Wada
コーポレートガバナンス・コード導入から10年超が経過し、上場企業における社外取締役の数はそろった。しかしニデックの不祥事などで露呈したのは、経営トップによる情報の隠蔽を見抜けず、蚊帳の外に置かれる“お飾り化”した監視役の実態だ。なぜ日本の社外取は機能しないのか。特集『社外取10821人の全序列【2026最新版】熱狂バブルの落とし穴』の#2では、企業法務の重鎮で日本生命保険などの社外取締役を務め、小説『社外取締役』の著者でもある牛島信弁護士に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
日本の上場企業は「幹部従業員協同組合」
「知らぬが仏」を許さない司法の介入を
――コーポレートガバナンス・コード導入から10年以上がたち、社外取締役の「頭数」はそろいました。しかし不祥事は一向に絶えません。現在の日本の社外取締役が、本来期待される役割を果たしていると思いますか。
立派な社外取締役もいらっしゃると思いますけれども、役割を果たしていない方が多くいると思います。
なぜか。日本の多くの上場会社は「幹部従業員協同組合」だからです。つまり社長以下の執行が、人事も情報も、全てを握っている。
ニデックの不正会計問題も、社外取締役は「知らぬが仏」で済ましてしまった。私は、社外取締役に対する裁判所の脅威がないことが駄目だと思っています。最終的には裁判所、つまり司法が、社外取締役の注意義務違反を責めなきゃ駄目です。
スルガ銀行のときの第三者委員会報告書でも、社外取締役は「知らぬが仏」で済まされた(ダイヤモンド編集部注:2018年のスルガ銀行不正融資問題の第三者委員会報告書では、社外取締役は「情報提供がなく監督は困難だった」と評価され、法的責任の追及は見送られた)。(社外取締役が)知らなかったものはしょうがないとする。今でもそうです。
でもコーポレートガバナンス・コードには、積極的に情報を取りなさいと書いてあります(ダイヤモンド編集部注:同コード原則4-13では「必要と考える場合には、会社に対して追加の情報提供を求めるべきである」と能動的な情報収集を規定している)。
期待される役割を果たすに当たって当然の前提となることをしていないのに高い報酬をもらっている人もいる。私はおかしな世の中だなと思っています。
――ニデックの調査報告書でも社外取締役は「根本的な問題について情報共有がなされておらず、問題意識を持つことのできない状態にあった」と認定されました。これは不祥事が起きた企業でよく聞く話です。しかし社外取締役が情報を取ろうとしても物理的に取れないケースは確かにあるのではないでしょうか。
しかし取りに行かなきゃいけない。それができなければ直ちに辞任すべきです。「私は社外取締役としての役割を果たそうとしたら拒絶されたので辞めます」と言うべきですよ。それが責任あるビジネスパーソンの言うべきことだと思う。
私も社外取締役をやっていますが、どうしても受け入れられないことがあり、執行と話してもらちが明かなければ辞任します。
当然です。だって社外取締役は社長のためではなく、株主や社員のためにやる仕事ですから。しかし日本のカルチャーではそういうことが通りにくい。
だから私は、米国や英国から持ち込まれたコーポレートガバナンスの制度が、日本に本当に根付くのか深い疑問を持っているのです。
企業法務の重鎮に、日本のガバナンス制度に対する「深い疑問」を言わしめるほどの根深い病理とは何なのか。次ページでは、社外取を無力化する「幹部従業員協同組合」のメカニズムを解剖するとともに、ガバナンスを形骸化から救う、ある「特効薬」について明らかにする。







