コンセプトはどうやって生まれるのか?
わたしの答えは簡単です。
コンセプトが生まれる源、それは「夢」です。
おそらくウォルト・ディズニーには、ディズニーランド建設にあたって大きな夢があったでしょう。「それまでアニメーションの中で実現していたおとぎの世界を、現実の世界に再現したい」という夢です。
研究者としての自分がラッキーだったなと思うのは、わたしが子どものころには科学全般に「夢」があったんですね。ちょうど高度成長の時代で、たとえば鉄腕アトムが原子力エネルギーで動く「科学の子」だったように、科学が進むほど世界は豊かになり、人々は幸せになれると無邪気に信じていました。
いま国論を二分するような大問題になっている原子力発電所にしても、「こんなちっぽけなウランで、こんなにたくさんのエネルギーが出るんだ!」と胸をワクワクさせていたし、クラスには機械や科学が大好きな「科学少年」がたくさんいる。新幹線もできるし、アポロは月に飛び立つし、SF映画や漫画もたくさん出てくるし、ほんとうに科学が夢にあふれた時代でした。
いま、学生たちに「きみの夢はなんですか?」と質問すると、「公務員になること」や「30歳までに起業すること」など、職業的な目標を答える人が増えています。たしかに、それはそれで立派な目標でしょう。
しかし、わたしの言っている「夢」とは、目に見える目標ではなく、もっとバカバカしいものだと思ってください。
周りの大人から「そんなバカなこと言ってないで、もっと真面目に考えろ」と笑われるようなこと。「いい歳して夢みたいな話ばかりするな」と叱られるようなこと。
大きな夢を持つには、バカになる勇気が必要です。わたしは「バカ」の力を信じていますし、その可能性を信じています。そしてバカになるための実践的なトレーニングとして、前任の名古屋大学だけでなく、最近では東大名物ともなりつつある「バカゼミ」という特別講義を毎年実施しているほどです。
この「バカゼミ」については本書で詳しく紹介するとして、ここでは「コンセプトの大元には『夢』がある」「夢とは本来バカバカしいものである」という2点を忘れないようにしてください。
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