介入を繰り返すと“抑止力”低下
外貨準備にも限度がある

 このところ、円安に対処するための円買い介入が繰り返されるようになっているが、「介入には効果がない」ということではない。しかし、介入によって円相場の基調そのものを転換することができないのだ。

 これは重要な点だ。もし現在の円安が、投機筋による一時的な円売りや、市場のパニックによって生じているのであれば、巨額介入によって投機的なポジションを崩せば、円相場は持続的に元の水準へ戻るはずだ。

 しかし、実際には介入後しばらくすると再び円安になる。この事実をきちんと認識する必要がある。

 また、介入をいくらでも繰り返せるわけではない。円買い介入を行うには、日本政府が外為特別会計で保有しているドル資産を売却しなければならないからだ。

 26年7月末の日本の外貨準備総額は約1兆2871億ドルだ。このうち、米国債などの証券と外貨預金からなる「外貨」は約1兆896億ドルで、証券が約9273億ドル、預金が約1623億ドルである。残りには、金、SDR、IMFリザーブポジションなどが含まれている。

 円買い介入の余力を考える際には、外貨準備総額より、この証券・預金部分を見る方が実態に近い。

 もちろん、日本がすぐに介入資金を使い果たすわけではない。現在でも1兆ドルを超える外貨を保有しているからだ。しかし、円買い介入を繰り返すたびに外貨資産を取り崩すことになる。そして、現在のような円安局面では、円売り・ドル買い介入によって外貨準備を積み増すこともできない。

 より重要なのは、市場がその事実を知っていることだ。市場参加者が「日本政府には無制限に介入を続ける能力はない」と考えるようになれば、介入に対する警戒感が弱くなる可能性がある。

 政府が介入しても、その後、再び円安になるという経験が積み重なれば、投機筋は「介入があっても一時的だ」と考えるようになる。そうなれば、介入の抑止力そのものが低下してしまう。

内外金利差や資源高、海外投資増
資金が国外に流れる経済構造に

 なぜ介入しても、円安に戻るのか。

 最大の理由は、円安を生み出している基本条件が変わっていないことだ。

 日米の金利差は依然として大きい。円で低い金利で資金を調達して、高い金利のドル資産を保有する取引には依然として魅力がある。

 それだけではない。日本はエネルギーや原材料の多くを海外に依存しているため、原油価格などが上昇すれば巨額の外貨支払いが必要になる。26年7月には輸入額が過去最高となるなど、原油価格上昇や「デジタル赤字」などを背景として貿易収支の赤字は構造的だ。

 また、日本企業による海外直接投資、機関投資家や個人による海外証券投資など、長期的に資金を海外へ向かわせる力も存在する。

 金融政策だけでなく、財政政策に対する市場の評価も重要だ。財政赤字や政府債務が拡大し続けると市場が考えれば、日本の長期金利や通貨に対する信認にも影響する。

 現在の円安を一つの原因だけで説明することはできないが、少なくとも、単なる一時的な投機だけで説明できないことは明らかだ。