1.「タダで周知・啓発」の旨みで目が曇る
2.タイアップ案件が頻繁にくるので「機械的判断」になりがち
3.無理筋クレームに対応しすぎて「常識」が麻痺

 まず、1から説明しよう。そもそも大前提として、なぜこのようなタイアップがあるのかというと、映画や映像コンテンツを制作・配給する企業側と、中央省庁側の利害が一致しているからだ。

 企業側が役所や病院など公共機関でポスターを貼ったりプロモーションすることは難しい。しかし、中央省庁とコラボをすれば、全国の自治体や関係機関でPRができる。

 一方、中央省庁側からすれば、公共事業の周知や啓発で潤沢な予算が組まれることは稀である。そのため、ポスターの制作や郵送など諸経費は企業側がもってくれるタイアップ案件は「渡りに船」だ。

 そこに加えて、企業側は「このドラマは前のシーズンは大ヒットして海外でも話題になりました」などとリーチできる視聴ターゲットなどと「効果」を盛んにアピールするので、「ヒット作」であればあるほど、担当者はタダで最大限の周知・啓発ができると前のめりになる。

 こうした構造があるので、映画やドラマはこぞって中央省庁に「プロモーション案件」を持ちかけるという実態がある。

 報道によれば、「ラヴ上等」シーズン2は作品完成後にNetflix側から法務省にタイアップを提案したという。また「ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記」も、厚労省大臣官房総務課広報室がメディアに答えたところでは、制作会社からタイアップの依頼があったという。

麻痺する常識
エリートが陥る危機管理の死角

「いやいや、いくらタダで周知・啓発ができるからって、担当者は作品を精査して、役所や公共事業とコラボするのにふさわしいか判断しなくちゃダメだろ」と思うかもしれないが、その判断が「雑」になってしまうのが、2の《タイアップ案件が頻繁にくるので「機械的判断」になりがち》である。

 先ほども申し上げたように、エンタメ企業にとっても中央省庁にとっても「タイアップ案件」はおいしいので、わりと頻繁に行われる。

 一例として、近年の厚労省のタイアップ案件を振り返ってみよう。2024年は2月にドラマ「となりのナースエイド」、TVアニメ「薬屋のひとりごと」、8月には映画「ぼくが生きてる、ふたつの世界」、10月には映画「アイミタガイ」、11月には「劇場版ドクターX」とタイアップした。

 2025年は9月に映画「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」、11月には映画「平場の月」。26年になると4月に「お終活3 幸春!人生メモリーズ」、8月には映画「平行と垂直」、そして今回炎上した「ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記」である。

 いかがだろう、映画やテレビがいかにタイアップポスターを重宝しているかがわかるだろう。これだけ頻繁にタイアップ案件があって、そのたびに作品の確認→承認→企業側が全国自治体や病院など公的機関にポスターを送付して、貼り出す、というプロセスが繰り返されると、どうしてもルーティン化してしまう。