応援広告を一文ずつ切り分ければ、名字の読み方、経理の経歴、金メダル、黒獅子旗という四つの材料は、最初から最後まで一本につながっている。単発のダジャレを並べたのではなく、「コン」と読ませるところから「クロジ」まで小さな筋書きがある。
社長の抱負を説明する文章ではないが、応援広告として何を記憶させたいかはよく整理されている。
評価を上げる冗談と
下げる冗談の決定的な違い
心理学には、ユーモアと人の地位との関係を調べた研究がある。「危険な賭け――ユーモアが地位を高めるとき、低下させるとき」(2017年)では、八つの実験を通じ、うまくいった冗談は話し手を自信と能力のある人物に見せ、地位の評価を高める一方、不適切な冗談は能力の評価を下げることが示された。
冗談は安全な決まり文句よりも失敗の余地がある。その小さな危険を引き受けることが、自信の表れとして受け止められるらしい。肩書が重い人ほど、あえて定型句から外れること自体がメッセージになる、という見方はできる。
もっとも、この実験は全国紙の応援広告を読んだ人が社長をどう評価するかを調べたものではない。近氏のコメントが経営者としての能力や実績を証明するわけでもない。研究は、社長の冗談がなぜ単なる軽口以上に印象に残りうるのかを考える、一本の補助線にすぎない。
自分を笑いの材料にして
相手を尊重する姿勢は評価された
リーダーの自虐的なユーモアを扱った「『あなたではなく、私の問題です』――変革型リーダーシップと自虐的ユーモア」(2013年)という研究もある。
大学生155人に、異なる種類のユーモアを使うリーダーのスピーチを示したところ、自分を笑いの材料にしたリーダーは、他人を攻撃する冗談を言ったリーダーより、相手を個人として尊重する姿勢が高く評価された。
ただし、近氏は自分の失敗や弱点をさらしているわけではないので、典型的な自虐とは言いにくい。この研究から言えるのも、笑いの対象を他人に置くか自分に置くかで、受け手の印象は変わりうる、という程度だろう。
応援広告の受け手も、近氏の部下だけではない。取引先、株主、野球ファン、たまたま紙面を開いた読者まで含まれる。したがって、社内の上下関係を縮めたとまでは言えない。







