もちろん社長の緊張を和らげ、話しやすい雰囲気をつくる目的もありますが、同時に事業の実態やお金の流れを自然な会話の中から把握しています。
例えば、「趣味は何ですか」「休日は何していますか」と聞くことで、個人的な支出が会社の経費に含まれていないかを確認できます。家族構成や住まい、車、旅行などの話からは、申告所得と実際の生活水準が釣り合っているかが見えてきます。
また、会社を始めた経緯や取引の流れ、従業員の人数、繁忙期などを聞いておくと、後から帳簿を確認した際に社長の説明と数字が一致しているかを検証できます。
何気ない会話の中で話した内容と帳簿に食い違いがあれば、その部分が調査の重要なポイントになるのです。
「どうせバレない」は禁物!
不正後に待ち受けるペナルティーとは
菊池 悠(きくち・ゆう)/税理士。菊池悠税理士事務所(ひふみ相続税理士事務所)代表。早稲田大学大学院会計研究科修了。MBA(会計学)取得。東京国税局に約12年間勤務し、国税調査官として500件超の税務調査に携わる。無予告調査や悪質・多額事案なども数多く経験。退職後、大手相続税専門税理士法人で相続税実務を経験したのち独立。現在は「調査する側」の経験を生かし、税務調査を見据えた相続税申告・中小企業の税務顧問を手がける。
――悪質な経費の水増しや売り上げ隠蔽が発覚した場合、どのようなペナルティーが待っているのでしょうか。「追加で税金を払えばいいや」と軽く考えている人も多そうです。
税務署は、意図的な隠蔽や仮装行為に対して厳しい課税を行います。意図的な隠蔽・仮装行為とみなされた場合、本来納めるべき税金に加えて重加算税が課されます。無申告の場合は40%で、過去にも不正を繰り返していた場合や、一定の電子データに関する不正があった場合には加重され、最大60%となります。さらに、納付が遅れた期間に応じて、高い利息(延滞税)が雪だるま式に膨れ上がります。
隠蔽・仮装などの不正が認められた場合、最大7年分まで遡ってこれが適用されるため、追徴課税の総額が本来支払うべき税金の倍以上に達することもあり、一瞬で手元のキャッシュがなくなります。
「バレたら払えばいい」という考えは、現実には通用しません。データ照合、銀行や取引先への調査、タレコミ、雑談から生活実態を探る技術など、税務署の追及網は想像以上に緻密であり、課せられるペナルティは重いものです。
不正が発覚すれば重加算税が課される場合があり、税金を納付しなければ差し押さえなどの滞納処分を受ける可能性もあり、安易な脱税隠蔽は割に合わないと心得るべきでしょう。
ただ、私自身、調査官として多くの現場を見てきましたが、日頃から帳簿や証拠書類を整え、一つひとつの取引を合理的に説明できる状態にしておけば過度に恐れる必要はありません。「どうすれば隠せるか」ではなく、「どうすれば説明できるか」。その視点で日々の経理や申告に取り組むことが、結果として会社と自分自身を守る一番の近道だと思います。
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>>【第2回】「〈税務署に狙われる店〉の特徴とは?内偵は「トイレでメモ」「3人1組で閉店まで」「帳簿の場所を確認」」は9月11日(金)に配信予定です







