例えば飲食店であれば、仕入金額から、国税の持つ膨大なデータを基に算出した同業他社の原価率で逆算すれば、おおよその予想売上高が推計できてしまいます。申告された売り上げがそれより明らかに低ければ、「売り上げを抜いている可能性が高いな」と調査官からはバレてしまうわけです。

 これは飲食店に限った話ではありません。取引先や仕入れ先に対して取引内容を照会する「反面調査」という制度もあり、税務署は第三者に「この人といくら取引しましたか」と確認できます。本人がいくら申告書の数字を取り繕っても、取引相手側の記録と食い違えば、そこで矛盾が発覚します。

――取引先にまで確認が及ぶのですね。銀行口座についても同じような照会ができるのでしょうか。

 税務署は金融機関に対しても取引履歴の照会をかけることができます。売り上げ代金の入金だけでなく、不自然に大きな出金や、事業と関係なさそうな資金移動があれば、そこから資金移動の後を追っていくこともできます。

 また、「現金で受け取ったから記録が残らない」と思っていても、結局は生活費や大きな買い物のために口座を経由することが多く、そこに痕跡が残ってしまうのです。

――データ分析だけでなく、人からの情報提供も大きな武器になっているそうですね。

 その通りです。税務署や国税局には、匿名の情報提供が毎日のように届きます。電話や投書はもちろん、国税庁のウェブサイトには不正情報を通報するための専用窓口も用意されており、誰でも気軽に情報を寄せられる仕組みになっています。

 情報提供された内容そのものを鵜呑みにするわけではありませんが、これをきっかけに国税の内部データを再チェックし、タレコミに信ぴょう性があると判断されれば調査の優先順位が一気に上がります。

雑談じゃなかったの…?
凄まじい追及テクニック

――机上のデータ分析だけでなく、実際の調査の現場でも独特のテクニックがあるのでしょうか。

 はい。ここが調査官の腕の見せ所です。税務調査の現場では、いきなり帳簿などの話には入りません。「最近の調子はどうですか」「休みの日は何をされているんですか」といった、世間話のような雑談から入ります。

 しかしこの雑談は実は単なる世間話ではありません。