海外エアラインからの移籍オファーを断った機長はいずれも、機長歴20年以上で、社内では管理職としても安定した立場にあったという。

 断った理由は、米国では物価や税負担に加え、治安、住居、家族を帯同した場合の教育、社会保障制度などを総合的に考えれば、「米国で40万ドルもらうより、日本で年収3000万円超を維持しながら暮らす方がいい」と判断したという。ANAでは自ら移籍した機長はいても、スカウトで動いた機長はあまりいないそうだ。

妻や子供から「お父さん怖い」
「高給取り」の裏にある機長の苦労

 そもそも日本で年収3000万円超を維持できる職業は非常に限られている。一般的な会社員からすれば、「うらやましい」のひと言に尽きるだろう。しかし、高額な給料をもらえる裏側には、それに伴う努力や厳しさもあるという。

 まず、不規則な勤務、長距離フライトによる疲労、時差への対応が挙げられる。さらに近年は路線拡大の一方で人手に余裕があるわけではないので忙しい。もちろん乗務中は数百人もの乗客の命を預かる任務のため、高い集中力を維持しなければならない。

 また、近年はパイロットやCAの飲酒が厳格化されたことから、オフでの自由が少なくなったとも言える。国内外問わずステイ地での飲酒は相当の制限を必要とされ、自己を律しながら時間を過ごしているという。

 さらにパイロットは、一度資格を取得すれば終わりではない。年に2回の定期的な健康・技能審査を定年まで繰り返す。審査前には法律や運航規程、機体の変更点、緊急時の対応などを徹底的に学び直す。

「いつも審査の1カ月前くらいから、妻や子どもに『お父さん怖い』って言われるんですよ。教官からの査問をクリアできるように、家でもずっと集中して勉強していますからね」(前出の機長)。「繊細な機長だと耐えられずにメンタルをやられることもあります」と明かす。

 こうした話を聞くと、パイロットの給料が高い理由も、さもありなんだ。

ANAがJALを183万円上回るが
「平均」では見えないパイロット給与

 ところで先述したANA2335万円、JAL2152万円のパイロットの平均年間給与。単純に計算すれば、ANAがJALを183万円上回っている。