――狙われやすい業種に共通点はあるのでしょうか。それとも、業種にかかわらず誰もが対象になり得るのでしょうか。

 国税庁が毎年公表している重点分野は、やはり調査対象になりやすい傾向があります。近年では民泊などのシェアリングビジネス以外にネット取引、ライブ配信など、新しいネットビジネスが特に注目されています。

 また、飲食店やキャバクラなど現金での取引が多い業種は、売上除外の有無を確認する必要があるため、無予告の調査先として以前から選ばれやすい業種です。

 さらに最近では、SNSの普及によって、投稿内容から繁盛ぶりや事業規模が把握できるケースも増えています。「SNSでは毎日のように満席の様子を発信しているのに、申告された売上はそれほど多くない」といった違和感があれば、調査対象を検討する一つのきっかけになることもあります。

 ただ、私が調査官だった頃もそうでしたが、最終的に調査するかどうかは業種だけで決まるものではありません。申告内容に不自然な点がないか、収集した情報と整合しているかなど、さまざまな情報を総合的に分析した上で判断します。

 ですから、「この業種だから安心」「この業種だから必ず狙われる」というものではなく、どの業種であっても申告内容に不自然な点があれば調査対象になり得るということです。

調査先は「勘」で
決まるわけではない

――税務署は「勘」で調査先を選んでいるわけではないんですね。

 その通りです。税務調査というと、突然やって来て帳簿を調べる場面を想像される方が多いですが、実際にはその前段階の情報収集に多くの時間をかけています。

 店舗の様子や客入り、営業時間、従業員数といった現地で得た情報に加え、近年ではAIや各種データ分析も活用しながら、申告された数字との整合性を確認しています。それらを一つひとつ積み重ね、「本当に申告内容と整合しているのか」を見極めていくのです。

 ですから、税務調査対策で最も重要なのは、「見つからないようにすること」ではありません。日頃から帳簿や領収書を整理し、数字についていつでも説明できる状態にしておくことです。その積み重ねが、結果として一番の税務調査対策になります。