客として飲食店へ
調査官によるすさまじい内観調査の実態

――情報収集の一環として税務署が行う内偵調査の実態とは、どのようなものでしょうか。

菊池悠弁護士菊池 悠(きくち・ゆう)/税理士。菊池悠税理士事務所(ひふみ相続税理士事務所)代表。早稲田大学大学院会計研究科修了。MBA(会計学)取得。東京国税局に約12年間勤務し、国税調査官として500件超の税務調査に携わる。無予告調査や悪質・多額事案なども数多く経験。退職後、大手相続税専門税理士法人で相続税実務を経験したのち独立。現在は「調査する側」の経験を生かし、税務調査を見据えた相続税申告・中小企業の税務顧問を手がける。

 私が東京国税局の税務調査官だった頃は、調査対象となる会社や店舗については、事前に現地へ足を運んで状況を確認することがありました。税務署内では「内観調査」と呼ばれる調査方法です。

 例えば飲食店であれば、お客さんのふりをして来店し、客席数や客単価、混雑状況、従業員の人数、店の間取りなどを確認します。また、店員さんとの何気ない会話から繁忙期等の店の状況や経営者の情報を聞き出していました。

 キャバクラやスナックなどでも一般のお客さんとして入店し、終電過ぎまで過ごすなんてこともありました。店内で不自然な行動はできませんから、気付いたことはトイレに立ったタイミングで手帳や携帯にメモを取ることもありましたね。

――自然と店内に入り込み、かなり細かく見ているんですね。

 そうです。特に飲食店やキャバクラなど、現金での取引が中心となる業種は、無予告で税務調査が行われることが多いです。現金売上を除外しているケースでは、事前に調査日を知らせてしまうと、帳簿や伝票などの証拠が整理・隠蔽されてしまうおそれがあるからです。

 そのため、後日無予告調査を行う可能性がある場合には、帳簿や伝票、レジデータなどがお店のどの辺りに保管されているかも、それとなく確認していました。

 無予告調査では、現場で迅速に必要な資料を確保することが重要になります。そのため、店舗の構造や資料の位置などを事前に細かく把握する必要があるからです。

3人1組で
開店から閉店まで

――印象に残っている内観調査はありますか。

 今でもよく覚えているのは、パチンコ店の内観調査です。当時は3人1組で交代しながら、開店から閉店まで同じパチンコ台のデータを取り続けたことがありました。

「そこまでするのか」と驚かれるかもしれませんが、目的は遊技を楽しむことではありません。その台の1日の売上金とデータを把握することで、調査の際に申告されている売上と乖離がないか、台のデータが改ざんされていないかを検証するためです。

 税務署は、こうした現場で得た情報と帳簿の数字を照らし合わせながら、不自然な点がないかを確認しています。税務署は常に徹底して調査している、と知っておくことで常に「見られているかもしれない」という緊張感を持っておくことが大切です。

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 今この瞬間にも、税務署はSNSの投稿や現地訪問を通じて静かに情報を積み重ねています。AIによるデータ分析が進む2026年、調査対象の選定はより精密になり、見過ごされる申告漏れは確実に少なくなっていくでしょう。

「バレなければいい」という発想はもはや通用しません。日頃から帳簿を整理し、鋭い調査官の指摘に対していつでも説明できる状態にしておくことが大切です。

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