ベッセント財務長官は、米国債のバイバックを増額するなど米国の長期金利上昇抑制に必死だ Photo:AFP=JIJI
米10年債利回りが一時4.75%近くまで上昇した。原油高によるインフレ懸念に加え、財政リスクや債券需給、AIによる成長期待などが長期金利を押し上げている。鍵を握るのが「タームプレミアム」だ。その中身を分解し、2027年にかけての米長期金利の行方を読み解く。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)
原油高だけでは説明できない米長期金利上昇
鍵を握る「タームプレミアム」
米国のイラン攻撃の直後には一時4.0%を割り込んだ米国10年債利回りだったが、その後、原油高に伴うインフレ期待などを背景に上昇し、5月には4.50%を上回っている。
6月17日のベルサイユ宮殿における米・イラン合意を受けた原油先物価格の下落に伴って、一時4.3%台まで低下した米国10年債利回りだったが、足元ではイラン情勢の不透明化を背景に再上昇し、4.75%レベルに到達した。
総じて原油高やインフレによって押し上がっているイメージが強い米国長期金利だが、むしろFRB(米連邦準備制度理事会)がインフレ下で利上げをしないことで「将来、さらにインフレが加速するとの不透明感が高まった」とし、これを上昇の主因とする声もある。
また、AI関連企業による社債発行などによる債券需給悪化も材料視され、そのようななか、債券需給を改善すべく、米財務省による国債バイバック増額が発表されたのだが、当局が債券市場に過度に関与することは、やはり「将来の不透明感を強める」などとの理由から、むしろ長期金利押し上げ要因だとする声が上がっている。
将来のインフレ懸念や不透明感などについては、「タームプレミアム」を押し上げる要因とされ、長期金利がタームプレミアム拡大によって上昇したとの総括もよく聞かれるのだが、FRBが利上げを行わないことで、むしろ長期金利が上昇しているような現状を説明するにはちょうどいいキーワードであるといえよう(図表1参照)。
次ページでは、タームプレミアムを分析しつつ、米長期金利の行方を予測する。








