紙のきっぷ時代の「特例」は東京駅から概ね30キロ圏の「大都市近郊区間」に限られていた。だが、Suica導入とあわせて近郊区間は拡大していき、首都圏エリアの北東は常磐線浪江駅、北西は大糸線白馬駅まで、もはや「首都圏」も「近郊」も飛び越えて広がっている。

 もっともこうした地域では、路線の密度、列車の本数からして利用経路はほぼ特定されるため、運賃計算変更の影響はほとんどない。問題は大都市近郊区間化の副作用だ。

 現代の利用者が意識する機会はほとんどないが、101キロ以上(有効期間2日以上)の乗車券(紙のきっぷ)は経路を外れたり、戻ったりしない限り「途中下車」ができる。しかし、経路が指定されない大都市近郊区間では、101キロ以上であっても有効期間は1日で、途中下車できない。仮にJR東日本全線にわたり「大都市近郊区間化」すると、途中下車可能な乗車券がなくなり、全ての乗車券は有効期間1日となる。

 乗車券は長距離になるほど割引される原則(遠距離逓減制)がある。例えば、東京駅(東京都区内)から宇都宮、福島に立ち寄り、仙台まで移動する場合、通しの乗車券は6270円(有効期間4日間)だが、東京~宇都宮間(1980円)、宇都宮~福島間(3190円)、福島~仙台間(1410円)に分けると計6580円で、5%ほど高くなる。こうした運賃差は、利用者にとって決して小さな負担ではない。

 JR各社は今年3月に「往復乗車券(往復割引)」を廃止するなど、営業制度の簡素化を進めているが、利用者に不利益をもたらす大規模な制度変更を半年で強行するとは、さすがに思えない。

 だが、Suicaは仕組み上、日をまたいだ利用や途中下車に対応できない。どちらかに統一できない以上、エリア統合後の取り扱いは、Suica利用時は大都市近郊区間と同様に扱い、紙のきっぷは従来の営業制度を適用する、という併存しかなくなるだろう。

 ただ、JR東日本は紙のきっぷの縮小、廃止を進めており、あくまで過渡的措置の位置づけになる。では、将来的に全線がIC化し、大都市近郊区間になってしまうのか。

 ここで「Suicaアプリ」と「スマホ改札」の関係が浮かび上がる。

Suicaエリア拡大のロードマップSuicaエリア拡大のロードマップ 拡大画像表示