アクティビストの実像#5Photo by Yoshihisa Wada

数多くの経営トップに解任提案を突き付け、時には訴訟も辞さない“武闘派アクティビスト”として知られる香港の投資ファンド、オアシス・マネジメント。今年は株主総会前に大手町や品川など主要駅でサイネージ広告を打ち、場外で情報戦を展開する新手を繰り出した。その真の狙いは何か。連載『アクティビストの実像』の本稿で、ターゲット企業の選定基準やその独自調査手法に至るまで、最高投資責任者のセス・フィッシャー氏が明かした。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

トップ解任提案の増加は「必然」
社外取“第3世代”に説明責任問う

――株主提案全体において増配などの株主還元要求が減少する一方、取締役の選解任議案が増加傾向にあります。この変化をどう見ていますか。

 これはガバナンス改革における自然な進化の結果だと捉えています。

 コーポレートガバナンス改革が始まった当初、日本企業には独立した社外取締役に対する認識も理解もほとんどなく、実際に席を置く人はごくわずかでした。しかし改革を通じて、まずは2人、そして今では取締役会の3分の1以上を社外取締役が占めるべきだとルール化されました。

 さらに社外取締役の「質」も明確に進化しています。

 第1世代は弁護士や公認会計士、第2世代は大学教授などの学者、そして現在の第3世代では、業界や経営、財務のエキスパートが重用されるようになりました。

 取締役会に本物の専門家がそろったからこそ、投資家として彼らの経営判断に対する説明責任を直接問える体制が整ったのです。以前のような単一の経営課題への要求にとどまらず、取締役の資質そのものを問う提案が増えているのは必然といえます。

――オアシス・マネジメントは今年の株主総会で、KADOKAWAの夏野剛社長や京セラの山口悟郎会長の解任提案を出しましたが否決されました。この結果をどう受け止めていますか。

 問題の所在に光を当て、取締役会に強い注目を集められた点では一定の成功を収めました。取締役会側もわれわれの問題提起を真剣に受け止めざるを得なくなっています。一方、完全に経営者の交代まで持ち込めなかった点については力不足を認識しています。

 われわれは両社と長年対話を続けており、依然として極めて大きなポテンシャルを秘めていると確信しています。KADOKAWAとは5~6年前から対話を重ね、一貫して「成長に向けてより計算されたリスクを取るべきだ」と求めてきましたが、構造的にそれが実行されず、結果としてリターンが上がっていません。

 素晴らしい知的財産を持ちながら、マネタイズや世界配信の体制が不十分であり、買収直後に減損処理を迫られるような不適切なM&Aも散見されます。だからこそ、経営トップである夏野氏の責任を問いました。

――今後も両社へのエンゲージメントは継続しますか。再度の株主提案もあり得るのでしょうか。

KADOKAWAの夏野剛社長の解任案で26.79%、京セラの山口悟郎会長の解任案で24.31%の賛成票を集めた6月の株主総会。果たしてファンドは対話を継続するのか、それとも「再度の株主提案」という実力行使に打って出るのか。そして主要駅をジャックした異例のサイネージ空中戦と、ターゲット企業のOBも含めて徹底的に調べ尽くす調査体制について、武闘派ファンドの最高投資責任者が次ページで明かす。