AIで年間10万時間削減も「まだ通過点」人と組織を育てる「雪だるま式DX」

 自分で考える力を、どう育てるのか。その舞台が、2023年8月に始動した全社横断プロジェクト「AIZAQ」だ。社員が業務課題を持ち寄り、部門を越えたチームで解決に挑む。参加は挙手制。AIスキルは初心者から上級者までさまざまだが、初心者でも熱意のある人がスキルの高い人と取り組むと、半年もすれば見違えるほどに成長しているという。

 ここで扱う課題は「テーマ」と呼ばれる。これまでに挑戦したテーマのうち約6割が業務変革につながり、年間約10万時間の削減になる見込みだ。

 それでも伊藤さんは、この成果をあくまで通過点だと言う。AIは日々進化し、今うまくいっている仕組みも、来年には作り直しが必要になるかもしれないからだ。だからこそ、成果を更新し続けられる人を育てることに意義がある。

 小さなテーマでも、自分たちでやり遂げれば、スキルと自信がつく。そうなれば、次はもっと大きなテーマに挑める。これを繰り返すうちに、取り組める課題も、生まれる成果も、雪だるまのように大きくなっていく。伊藤さんはこれを「雪だるま式DX」と呼び、海外拠点には「スノーボールDX」と伝えている。もちろんトップダウンのDXも重要で、2026年からは両輪で取り組みをさらに本格化させている。

いきなり「AIありき」は失敗のもと 業務改革には「型」がある

 AIZAQでは、一つひとつの業務課題をどう解決に導いているのか。伊藤さんがまず強調したのは、「いきなりAIに飛びつかないこと」だ。どういうことか。

 AI活用の第一歩として、社内問い合わせチャットボットを作る企業は多い。オムロンでも、初期に手がけたテーマの1つだった。

 ただ、社内規程やマニュアルをそのままAIに読み込ませても、うまくいくとは限らない。そもそもAIには、ハルシネーションがつきもの。元の資料の内容が古かったり、読み取りにくい図表が混じっていたりすれば、誤りはさらに増える。社員はAIの回答を信用できなくなり、結局は担当者が一つひとつ確認する羽目になる。仕事を減らすつもりが、かえって増えてしまうのだ。