若手社員から相談を受けたとき、どう対応するか?

 本稿の読者にはマネジャー層の方も多いと思います。そんな皆さんに問いかけたいことがあります。

 ある程度、社内で実績を積んだ20代後半の部下から、「社外での学びやNPO活動に取り組みたい」と相談されたら、皆さんはどのような態度をとるでしょうか?

 かつては「そんな暇があるなら、週末の接待ゴルフにでも行け」といった対応も見られましたが、個人のプライベートが尊重される現代では、そうした上司は少数派でしょう。しかし、口に出さなくても、心の中で「社外活動に時間を割く余裕があるのなら、目の前の自社課題解決に全力を尽くしてほしい」と思うマネジャーは少なくないはずです。

 特にプレイヤーを兼ねる多忙なマネジャーほど、そう感じるのは自然なことです。

 それでもなお、私はマネジャーの方々に、若手の「活私奉公型パラレルキャリア」を積極的に推し進めていただきたいと考えています。

会社側が、若手社員の社外活動を後押しする理由

 若手社員の社外活動を会社側が後押しすることのメリットとして、次の3つがあります。

 1つ目は、自部門だけでは提供できない「無料の外部研修」になる点です。

 現場のマネジャーに、若手社員のOJTを丁寧に行うゆとりがなくなり、部下の育成は難しさを増しています。パラレルキャリアは、言い換えれば、「手厚い外部研修」を社外で受けてきてくれるようなものです。

 社内という「同質性の高い閉じた世界」から一歩外に出て、多様な人々と協働することは、コミュニケーション力や説得力を鍛えます。社外で接する「弱い紐帯」(普段接しない人とのつながり)こそが、新たな気づきや発想をもたらします。

 2つ目は、部門の成果に直結し、Win-Win(個人と組織の相互利益)の関係につながる点です。

 社外で磨いたスキルやネットワークを自部門の業務に還元できれば、個人と組織の双方にメリットが生じる関係が作れます。これが最も重要なポイントです。それを実現するためには、マネジャーが対話を通じて本人の学びを把握し、部門内外の課題解決と上手くマッチングさせる意識が不可欠です。

 3つ目は、若手の「離職」を抑制する効果がある点です。

 「社外活動を認めると、他社に目移りして辞めてしまうのでは?」という心配は誤解です。社外活動を奨励している企業では、むしろ、離職率が低下しているというデータも示されています。

 若手社員が社外活動を求める背景には「もっと成長したい」という強い意欲がある一方で、「今の仕事だけでは成長が止まってしまう」という閉塞感や将来への不安を抱いているケースも少なくありません。成長機会を与えずに囲い込もうとすることこそが、最も離職リスクを高めます。

 逆に、従業員の意思を尊重し、挑戦を認める姿勢を示す組織は、従業員エンゲージメント(企業と従業員の信頼関係)を高め、従業員の離職リスクを抑制することができます。

 ただし、最大の注意点があります。それは、「成長した個人のスキルの受け皿(還元の場)」を組織側で用意することです。

 個人がどれだけ成長しても、社内でそのスキルを発揮できる場がなければ、「ここでは自分を活かせないし、成長もできない」と感じて離職に向かいます。これはかつて、企業が費用を投じて海外MBAを取得させた優秀な人材が、帰国後に活躍の場を与えられず、次々と退職してしまった「MBAホルダー問題」と同じ構図です。社外活動によって成長した個人に対して、適切な場(プロジェクトやポスト)を提供できるかどうかに、組織側の柔軟性や懐の深さが問われています。