これらのコミュニケーションは、日本型雇用慣行による年功序列と終身雇用が守られ、また、そのメリットを社員側が高く評価している場合には、有効なものだ。

今の若手は5年後も
会社にいるかわからない

 しかし、その前提が現実離れし、その前提に立ったコミュニケーションの“馬鹿馬鹿しさ”が顕在化しつつあると感じる。

「40歳になったときにこの会社でどんな仕事ができるようになっていたいか、と聞かれたんですが、思わず笑ってしまいました。5年後自分がこの会社で働いているかもわからない、世界に来年何が起こるかもわからないのに。もちろんいつも聞かれるので答えますが、一種のごっこ遊びとして割り切って答えている気持ちになりますね」(20代・男性・小売業)

「5年後に会社で目指すこと、みたいなことを面談で聞かれます。もちろん答えはしますが、その5年後も会社にいるという前提が必要な“宣言”に何の意味があるのかよくわからないというのが本音」(30代・女性・出版業)

「会社の制度や福利厚生の説明をされても、それが自分の将来にどれほど関係するのかイメージしにくいです。介護休暇が取りやすい、みたいな話をされてもそれって20年、30年後の話ですよね」(20代・男性・製造業)

「社長や偉い人が『この会社で長く頑張ったら、こんな良いことがある……』という話をするたびに、『それって典型的な生存者バイアスだよね』という話で同期と盛り上がる」(20代・女性・サービス業)

 なぜ「辞めない」ことを前提に話をするのか。それは辞めないことが合理的な選択であった時代の名残だからだ。いまこそ、建前だけの“ごっこ遊び”に終止符を打ち、社内での対話を現実化するときだ。辞めることと辞めないことの天秤がつりあってしまったからこそ、前提を逆転させて対話をするのだ。