もし秘密鍵の不具合がなければ、わたしは3000万円の時点で売り、その後の高騰を指をくわえて眺めていただろう。売りたくても売れなかったからホールドできた。強制的に死者さながらの状況に置かれていたのが功を奏したわけだ。
この話には続きがある。2026年3月のことだ。仮想通貨の復旧専門業者が秘密鍵を解除してくれたのだ。1万5000円の元手が12年間の放置を経て、2億の資産として手元に戻ってきたわけである。イーサリアムの秘密鍵が解除されたいま、わたしはさっそく売り時を考えはじめている。
生者に戻るとはそういうことだ。上がったから利益確定、下がったから損切り。そんな短期売買で資産を増やすのは、その筋のプロでも難しい。個人がやるべきことは1つだ。S&P500や日経平均株価などの株価指数に連動するインデックスファンドをひたすら積み立て、あとは放置する。これがもっとも手堅い。実はプロが運用するアクティブファンドですら、長期で見れば大半が市場平均(代表的な株価指数の成績)に負ける。つまり、その市場平均を黙って持ち続けるだけでプロの大半より上の成績になるのだ。
投資で最も難しいのは
「何もしない」ことだ
銘柄選びも、売買タイミングの研究もはじめから必要ない。だったら、毎月の買い付けまで自動化してしまえばいい。インデックスファンドを自動積立にして、あとはほったらかす。投資そのものを日常から追い出してしまえばいいのだ。
ところが人は値動きを見ると、どうしても何かしたくなる。株価が上がれば「そろそろ利益を確定したほうがいいんじゃないか」と思う。逆に大きく下がれば、「もっと下がるまえに逃げたほうがいいんじゃないか」と怖くなる。長い目で見れば株価はいずれ回復するはずと頭ではわかっている。でも自分の資産が何十万円、何百万円と減っていくのをまえに、じっとしているのは難しい。耐えきれずに売ってしまう。
せっかく長期投資をはじめたのに、暴落したところで損失を確定させ、その後の回復を取り逃してしまうのだ。







