「不安だから買い足す」では、インプットは止まる
ただし、ここで陥りやすい罠があります。途中で「こっちを母艦にしたほうがいいのかも」と、他の教材に目移りしてしまうのです。
たとえば、参考書を半分くらいまで進めたところで、SNSで「この参考書がすごい」という投稿を見てしまう。書店に行って新しい参考書を見つけてしまう。友達が違う問題集を使い始めたと聞き、同じものを買ってしまう。気がつくと、机の上に5冊、6冊と参考書が積み上がっている……。これが、インプットが止まる典型的なパターンです。
東大生に取材すると、彼らは口を揃えてこう言います。「複数の参考書に手を出して、全部中途半端になるのがいちばんもったいない」。1冊を最後までやりきれば、その単元の知識は確実に身につきます。でも、3冊を3割ずつやっても、どれも身についていない状態にしかなりません。参考書は、「持っているだけ」では知識を高めてはくれないのです。
不安を埋めるために教材を増やすのは、勉強しているように見えて、実は勉強を遠ざけています。本当に必要なのは、新しい1冊を買うことではなく、今手元にある1冊を「もう1周」することです。
「いちばん売れている1冊」を、最後まで使う
それでも「どの1冊に絞るか」を迷ったとき、いちばんシンプルな選び方があります。それは「その分野でいちばん売れている1冊」を選ぶことです。少し意外に思われるかもしれません。「人と差をつけるなら、マイナーな良書を選ぶべきでは?」と感じる人もいるでしょう。
『知識と思考力がいっきに身につく 東大式インプット大全』(西岡壱誠 著、アスコム、税別1600円)拡大画像表示
しかし、東大合格者が使っていた参考書を調べると、驚くほど「定番中の定番」が並びます。仕事用にビジネス書を選ぶ場合でも同じです。ベストセラーは、それだけ多くの 人に検証されていて、洗練されています。
情報のレベルも一定の基準に達していて、ハズレが少ない。だからこそ、最初の1冊として安心して選べるのです。
そして、選んだら最後まで使いきる。途中で他の参考書が気になっても、いったん我慢して、まず1冊を使い切る。「これを終えてから次を考えよう」と決めておくと、目移りが止まります。
1冊を最後までやりきると、不思議なことに「2冊目に何をやるべきか」が自然と見えてきます。「ここがまだ弱いから、次はこれを補強しよう」と、自分の課題が浮かび上がってくるからです。
インプットのテキスト選びは、増やすのではなく、絞り込んで深めていくほうが、結果的に早く力がつきます。
・自分の認知特性に合う入口を知れば、インプットは無理なく続けられる
・学びの拠点を1冊に決めれば、知識は自分専用の財産になる
・1冊を最後までやりきった人だけが、次に進む権利を手にできる







