なんだかバッタに申し訳ないが、彼らの苦労のおかげで私たちはより安全な世の中に一歩近づくことができた。

 リンド博士は授賞式で、「バッタの研究は、長い旅路の始まりだったのです。この研究のおかげで、バッタの神経系を模した人工衝突センサーシステムを開発することができました」と語った。

どうしてキツツキは
頭を打ち続けても平気なのか

「人生ではいろいろなことが頭痛のタネになりますが、頭を壁にぶち当てて人生を過ごす場合はどうでしょう?」(アイヴァン・シュワブ教授)

 生きていれば必ず、いろいろな壁が私たちの前に立ちはだかる。ところがキツツキは、わざと壁にぶち当たりながら日々を過ごしている。

 北アメリカのキツツキは、1秒間に20回という驚異的なスピードで木をつつく。そして1日につつく回数は1万2000回にものぼるという。

 この時、キツツキにかかる力は一度につき1200グラム。これは、時速25キロメートル相当のスピードで壁に顔面衝突するのと同等の衝撃だ。人間では150グラムの力がかかった時点で気絶してしまう。

 キツツキがこんなドMな日常を送っても大丈夫な理由を明らかにしたのは、カリフォルニア大学デイビス校のアイヴァン・シュワブ教授と、同大学ロサンゼルス校のフィリップ・メイ医師(受賞時点で故人)。この功績を称えて、2人には2006年鳥類学賞が贈られた。

 シュワブ教授がキツツキに興味を持ったのは、キツツキの頭痛に興味があったからではない。

 どうして目が損傷を受けないかと疑問に思ったからだ。

 眼科専門医のシュワブ教授は、虫や鳥、爬虫類など、人間以外の動物がどのようにものを見ているかを比較することに興味を持っていた。

 人間の場合は激しく頭を打つと、目の後ろにある血管の破裂、神経の損傷などが生じることがある。しかし、キツツキでは脳障害や脊椎損傷だけでなく、網膜剥離も起こらない。