交通事故に遭った患者を診てきたシュワブ教授は、キツツキがどのように身を守っているかを探ることにした。その中で特に参考になったのが、メイ医師が1970年代に行った研究だったのだ。
頭と目を守る
驚きの身体構造
シュワブ教授は当時の知見をまとめ、キツツキは進化の過程で、衝撃から身を守るメカニズムを何パターンか身に付けたのだと報告した。
主なものは次の通り。
●頭蓋骨が厚いスポンジ状になっており、ヘルメットのように脳を守っている
●キツツキの脳みそは人間と違い、頭蓋骨の中にびっしりと詰まっている。人間の脳みそはたっぷりの髄液の中に浮いているが、キツツキには髄液がほぼ皆無なのだ。このおかげで衝撃を受けても脳みそがチャプチャプ動き回らず、前方からの衝撃に強くなっている
●下顎周辺の作りが、衝撃吸収クッションのようになっている。下顎は強力な筋肉で頭蓋骨とつながっており、キツツキが木をつつく1000分の1秒前に収縮しクッションの役割を果たす。このクッションのおかげで、衝撃が頭蓋骨の底や後部に分散されるので、脳には影響が出ない
『ヘンな科学“イグノーベル賞”研究』(五十嵐杏南、三笠書房)
●キツツキは人間と同じように、外側にまぶたが2枚あるが、もう1枚内側にまぶたがある。これがやたらと厚い。この内側のまぶたは、木をつついた瞬間に飛び散る木片から目を守るのと同時に、シートベルトのように目玉を固定している。このまぶたがないと、目玉が頭から飛び出したり、加速によって網膜が破れたりしてしまう。眼球自体の外側も硬く、網膜が動き回るのを防いでいる
近年では、キツツキの頭が小さいため、急ブレーキの時に体が前に引っ張られるような力も小さく、結果的に頭にかかる衝撃は脳しんとうを起こすほどではないと言われている。
いずれにせよ、明らかに硬い木にヘッドバンギングし続けるとは、なんとロックンロールな生き方なのだろう。
「恋愛の季節になると、キツツキの一種であるエボシクマゲラのオスは、縄張りの確保、エサの確保、そしてパートナー探しのために、1日に木を1万2000回も突くようになります。これは、人間が時速25キロメートル相当のスピードで、壁に1万2000回顔面衝突するのと同じような行為です。
キツツキには、網膜剥離を起こしたり、目玉が飛び出したり、脳しんとうになったり、頭痛になったりせずにその行為を行える機構があるのです。でなければ、せっかく射止めたお相手なのに、いざ家に帰ったら『ハニー、今日はちょっと頭痛がひどくて気が向かないや』なんて言わざるを得ないですからね」(シュワブ教授)
シュワブ教授は、キツツキの姿に仮装して授賞式に登場した。







