後年の研究では、現場に近づくほどその傾向が強まり、権限委譲の板挟みや思考のジレンマに悩まされる姿が明らかにされている(※注3)。
加えて、近年のマネジメント環境はさらに複雑化している。課長職のプレイング・マネジャー化の問題も指摘されて久しいが、部下1人ひとりの事情や価値観への配慮、専門性の高度化や技術進歩の速さによる「部下のほうが詳しい」状況への直面、ハラスメントやコンプライアンス対応の必須化など、求められる役割は増える一方である。
しかも、上司として若手の育成に割ける時間は減っているのに、最近の若手は早い成長を求めがちである。こうしたジレンマもまた、職場の上司を苦しめている。
本来、このような多忙な状況でこそ、任せられる業務は積極的に部下に委ねたほうがよい。任せることは確かに短期的には上司の負担を増やす。だが、部下の成長の機会となるため、部下のニーズとも合致する。
何より長期的にみて、部下が一日も早く「一人前」になることは上司の負担軽減に役立つ。つまり、上司・部下双方にとってWin-Winになるのである。
部下を育てるのも仕事なのに
管理職にはその時間がない
ところが現実はそう簡単にはいかない。筆者が研修時に大企業の中間管理職40名を対象に実施した簡易調査(2015)では、図表2-2で示すように、「忙しいときほど、部下や同僚に任せず、自分で仕事を片付けてしまう」と回答する管理職が65%にのぼった(※注4)。
同書より転載 拡大画像表示
※注3 Mintzberg, H.(2009). Managing. Berrett-Koehler Publishers.(池村千秋訳『マネジャーの実像』日経BP社、2011)。
※注4 芦高勇気・安藤史江・伊東昌子・渡辺めぐみ(2023)『職場がうまくいかないときの心理学100――チームリーダーにおくるマネジメント・ガイド』有斐閣
※注4 芦高勇気・安藤史江・伊東昌子・渡辺めぐみ(2023)『職場がうまくいかないときの心理学100――チームリーダーにおくるマネジメント・ガイド』有斐閣







