敬語を心得ている大人なら、「明日は休みを取っております」「担当の◯◯は、本日休暇となります」と告げるでしょう。会社自体が休みの場合は、「明日は休業日となっております」「〇日は弊社の定休日でございます」となります。
相手に不信感を与えないためにも、正しい謙譲語を理解し、誰に対して敬意を向けるべきかをおさらいしておきましょう。
使い方を間違えると
違和感につながる言葉
カフェやレストランで、「こちらがコーヒーになります」「ランチセットになります」。会議で「こちら資料になります」――これらは非常によく耳にする言い回しですが、違和感を覚える方も少なくないようです。私が長年「バイト語」と指摘してきた、代表的な言葉づかいのひとつです。
そもそも「なります」は断定の表現です。同時に「変化する」「移行する」というプロセスを含む言葉でもあります。「来年度より担当は〇〇になります」「優勝はAチームとなります」――何かが変化し、あるいは複数の候補から一つに絞られた経緯を伴うとき、「なります」は自然に機能します。
『大人がしている 気くばりのある話し方』(諏内えみ、明日香出版社)
ところがコーヒーは、最初からコーヒーです。資料は、最初から資料です。そこには何の変化も比較も存在しません。変化や選択のない場面にこの言葉を当てはめたことにより、聞き手に違和感として伝わってしまうのです。「コーヒーでございます」「こちらが資料でございます」と言い切るほうが自然です。
一方、変化や確定を伝える場面では「なります」が正しく機能します。「A社との会議は明日、B社は木曜日になります」――複数の候補から確定した文脈では、決定のニュアンスを帯び、情報をしっかりと刻み込む働きをします。「ご予算に合わせるとこちらのプランになります」も、絞り込みの経緯がある場面では、「でございます」より力強く響きます。
「なります」は、変化・比較・確定のプロセスを含む場面で使えば、言葉に力が加わり、存在しない場面で使えば違和感を与える。同じ一語が、文脈次第でまったく異なる印象を生むことになるのです。







