「紙クズ」まで守るのに
なぜ炎上は防げない?

 例えば、今から十数年前、大型ショッピングセンターの運営会社から、ある現代芸術家の個展の開催を検討しているので、リスクを判断してほしいと頼まれた。過去の作品や、発言を分析すると、かなり政治的な発信をしていることに加えて、児童虐待を連想させるような作品もあった。

 家族連れも多く訪れるこのような施設でやるメリットよりも、リスクのほうが大きいと判断をした筆者は「中止すべき」と強く提言した結果、その個展は開催されなかった。

 断っておくが、その現代芸術家が問題だとか、作品が悪いなどと言っているわけではない。そういうアートを見たいという人が訪れる美術館やギャラリーでやる分にはぜんぜん問題ない。

 その施設を利用する人々がどう感じるか、それが施設側にどんな影響を及ぼすのかを総合的に判断し、企業側はもちろん、アーティスト側にとってもプラスがないと言っているのだ。

 こういう大型施設の危機管理対応をやってきた立場からすると、130年以上の歴史があり、伝統や格式というものを重んじる帝国ホテルが「お籠もり会」について事前確認をしっかりしていないというのは正直、かなり驚いた。

 帝国ホテルには国内外のVIPが泊まる。場合によっては、何か問題があった場合、外交問題にも発展するような要人も泊まる。「危機」を先読みして未然に防ぐ能力が求められる。今回の炎上を見ると、それがあるのか疑わしい。

 帝国ホテルのホスピタリティー精神の高さを示す「紙クズはもう一泊します」という有名な広告がある。

 宿泊客がチェックアウトしたあと、大事なメモなどを忘れている可能性もあるので、部屋のゴミ箱の中身をすぐに処分することなく、24時間ほどホテル側で保管するという、帝国ホテルならではの取り組みを紹介したものだ。

 そこまで客の心を慮ることができるのならば、あの展示を見た性加害や性的搾取の被害者が抱える心の傷も理解できるはずだ。本当の意味での「おもてなしの心」をぜひ取り戻していただきたい。