台湾海峡と拉致問題、日本が懸念すべき国連の変化

 仮にオルバン氏が国連事務総長になれば、日本にはどのような影響があるのだろうか。

 まず懸念されるのが、台湾海峡や東シナ海の安全保障問題である。

 中国は1971年の国連総会決議2758号を根拠として、台湾が中国の一部であることは国際社会に認められていると主張している。

 しかし、この決議は中国の国連代表権を中華人民共和国政府に認めたものであり、台湾の主権や帰属そのものを明示的に決定したものではない。

 2024年10月には欧州議会も、中国による同決議の解釈を批判する決議を採択している。

 国連事務総長に、安保理の決定を左右する権限はない。しかし、国連憲章99条に基づき、国際平和を脅かすと判断した問題を安保理に提起できるほか、声明や外交的な仲介を通じて国際世論にも影響を及ぼす。

 台湾海峡で軍事的な緊張が高まった場合、それを国際社会の安全保障問題として重視するのか、それとも中国の国内問題として扱うのか。その違いは日本にとって決して小さくない。

 もう一つは、北朝鮮による拉致問題である。

 国連は長年にわたり、北朝鮮による拉致や強制失踪などの人権侵害を問題にしてきた。国連人権理事会や国連総会でも、拉致問題に言及する決議が繰り返し採択されている。

 日本にとって国連の人権メカニズムは、拉致問題を国際社会に訴え続ける重要な外交手段だ。

 ところが、国連の財政危機によって人権活動も予算面で厳しい状況に置かれている。人権団体「国際人権サービス(ISHR)」によれば、グテーレス事務総長の修正予算案では、人権部門の削減率は15%と、開発部門の11.7%を上回っていた。最終的に承認された2026年予算でも、国連の行政予算問題諮問委員会(ACABQ)は、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の削減対象を当初案の105ポストから117ポストに拡大するよう勧告した。

 昨年12月8日には、チリが40カ国を代表して共同声明を発表し、人権部門を不均衡な予算削減から守るよう訴えた。

 もっとも、日本自身も国連改革と予算規律の強化には賛成の立場である。問題は改革そのものではなく、その方向性だ。改革の名の下に人権関連の活動が縮小されれば、日本の外交努力にも影響が生じかねない。

 事務総長が独断で人権関連の制度を廃止できるわけではなく、オルバン氏が中国寄りと決まったわけでもないものの、国連トップの政治姿勢と組織改革の方向性を慎重に見極める必要がある。