中国との関係はさらに興味深い。

 2024年5月、習近平国家主席はハンガリーを公式訪問し、オルバン首相と会談した。

 両国は関係を「新時代の全天候型包括的戦略パートナーシップ」に格上げしており、習氏は、両国関係が歴史上最良の状態にあると述べた。

 ハンガリーは中国の「一帯一路」構想にも積極的に参加し、鉄道建設や電気自動車関連産業などで中国からの投資を受け入れてきた。

 しかも、中国にとってオルバン氏の価値は経済関係だけではない。2021年、EUが香港の人権問題をめぐって中国を批判する共同声明を出そうとした際、これを阻止したのがオルバン政権下のハンガリーだった。

 EUの外交政策では加盟国間の全会一致が必要となる場面が多い。ハンガリーが反対すれば、EU全体として統一した立場を打ち出すことが難しくなる。

 つまり、オルバン政権は中国への外交的圧力を弱める方向で、実際に影響力を行使してきたのである。

 さらに、2024年5月の中・ハンガリー共同声明では、両国が国家主権や領土保全を重視する姿勢を示し、ハンガリー側は「一つの中国」の原則を改めて確認した。

 オルバン氏が重視する国家主権や内政不干渉は、中国の外交原則とも共通する部分がある。

 中国から見れば、オルバン氏は単なるトランプ派の保守政治家ではなく、「他国の政治体制に干渉しない」という政治思想の面でも相性が良い。だからこそ両国は、経済協力だけでなく、重要な外交問題でも協力関係を築いてきたのだ。

米中露の利害は一致するのか?国連改革で見える温度差

 オルバン氏の国連トップ就任は、米中露それぞれに異なる利点をもたらす可能性がある。アメリカにとっては、MAGA的な政治思想と国連改革への姿勢が魅力となる。ロシアにとっては、ウクライナ戦争をめぐって西側の主流派とは異なる立場を取ってきた経歴が評価できる。中国にとっては、経済協力に加え、人権問題や国家主権をめぐって中国との対立を避けてきた実績が歓迎されるだろう。

 ただし、3カ国の国連観は一致していない。

 アメリカは国連の予算削減や組織改革を強く求めている一方、中国は多国間主義や途上国支援における国連の役割を重視してきた。ロシアも安保理常任理事国としての地位や拒否権を重視する。

 このように国連改革の方向性では対立していても、事務総長の人選では協力する余地がある。国際政治では、価値観や政治体制が異なる国同士でも、特定の問題で利益が重なれば協力することは珍しくない。

 ただし、今回の構想をめぐり、米中露の間で具体的な外交取引が成立した証拠はない。中国とロシアが最終的に支持するかどうかも、まだ不明な点には留意が必要だ。