「オルバン事務総長」の前に立ちはだかる英仏の拒否権

 そもそも、オルバン氏が国連事務総長になることは可能なのだろうか。

 国連事務総長は、安全保障理事会の勧告に基づき国連総会が任命する。安保理では15カ国中9カ国以上の賛成が必要であり、米英仏露中の常任理事国5カ国のいずれも拒否権を行使しないことが条件となる。

 WSJによれば、米国務省関係者はオルバン氏が8カ国の支持を得られ、10カ国まで拡大できると見込んでいる。

 最大の障壁となるのがイギリスとフランスだ。両国はウクライナ支援を重視しており、ロシアとの対話を優先してきたオルバン氏とは外交上の立場が大きく異なる。米中露の共同候補として担ぎ出されたオルバン氏を、英仏がすんなり受け入れるとは考えにくい。

 その一方で、現在進んでいる事務総長選挙も難航している。

 今回は中南米・カリブ海地域から次期事務総長を選ぶべきだという声が強く、国連史上初の女性事務総長を求める動きもある。

 10月16日の安保理非公式投票は、常任理事国の票を色分けする初めての投票となった。その結果、首位のコスタリカのレベカ・グリンスパン氏を含む全7候補が、少なくとも1カ国の常任理事国から反対票を投じられた。翌17日には、立候補していたセネガルのマッキー・サル前大統領が撤退を表明した。

 こうした膠着状態が、新たな候補者の浮上する余地を生んでいる。実際、10月21日にはアラブ首長国連邦がラナ・ヌセイベ氏を新たな候補者として推薦した。次期事務総長の選考では新たな候補者も浮上しており、今後の動向が注目される。

 もっとも、ハードルは少なくない。事務総長候補は国連加盟国によって推薦される。ハンガリーではすでに政権が交代しているが、新政権がオルバン氏を推薦するかどうかは不透明だ。もっとも、出身国以外の加盟国が推薦することも制度上可能だ。

 いずれにせよ、グテーレス事務総長の任期は今年12月31日までだ。米中間選挙後に出馬が表明されたとしても、残された時間は2カ月もない。オルバン氏はまだ正式な候補者ですらなく、オルバン事務総長の誕生は決して容易ではない。