「西側が守ってくれる」
その幻想が危険なワケ
米トランプ大統領と習近平主席との米中会談を見てもわかるように、今の国際社会のパワーバランスを見れば、「日本の諜報員が危機に陥ったら、西側諸国が一致団結して中国系の秘密組織を潰しにくる」なんて考え方はお花畑すぎる。
こういうお花畑的な認識は「被害」を悪化させる。2022年2月、ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始した際に「ロシアは世界を敵にまわした」「西側の制裁で白旗を上げるのも時間の問題だ」とお花畑的な論調が唱えられたが、筆者はロシアは食糧・エネルギー自給率も高いうえに、実際はいろんな国と貿易もしているのでそんな簡単に戦争は終わらないと本連載(2022年6月30日 ウクライナ侵攻5カ月目…日本人は「戦争報道のインチキさ」今こそ検証を)で述べた。
実際その通りになっている。「お花畑的な世界観」というのは、現実を正しく認識できず、さまざまな重要な決断を誤らせてしまう恐れがある。つまり、VIVANTに影響を受けた視聴者の中には「中国が何かやってきたらガツンと強硬な手段に出たほうがいいんだよ、いざとなりゃオレたちには西側諸国がついている」などと過激な国粋主義者になって、日本の国益に反するようなアクションに出てしまう人がいるかもしれないのだ。
「ゴチャゴチャうるせえなあ! エンタメだからいいんだよ」とキレる人もいるだろうが、エンタメだからこそこんな「現実っぽいウソ」を広めるのではなく「別班」が自力でシンシーをコテンパンに打ちのめせばいいではないか。
「日本のスパイに手を出したら西側諸国様が黙っていないぞ」という虎の威を借りてイキっているあたりが、多くの日本人が勘違いしている「もしも中国が攻めてきたら日米安保があるから、アメリカ様が黙っていないぞ」という考え方と微妙にシンクロしている。
結果として、エンタメの体裁で「属国根性」を刷り込んでいるのが問題なのだ。 もちろん、日米安全保障条約には日本への武力攻撃に対処するための規定がある。しかし、それはアメリカが常に日本の望むタイミングや方法で軍事行動を取ってくれることまで保証するものではない。
さて、こういう話をすると「プロパガンダとかなんだとか言っているけど、ほとんどの日本人はVIVANTを純粋なエンタメとして割り切っている。主人公が何を言おうと、国際社会への認識に影響なんてないって」と冷笑する人もいるだろう。あなたはそうかもしれない。
しかし、世の中には現実と虚構の区別がつかず、ごちゃ混ぜになってしまう人が一定数いるというのは、プロパガンダ・エンタメ作品の歴史を振り返っても明らかだ。







