両毛機工会のこうした動きに対し、モノタロウは対抗措置を講じた。独占禁止法第8条が定める「事業者団体が事業者に不公正な取引方法をさせる」という項目に抵触するとして、全機工連を相手取り、東京地裁に不公正な取引方法の差し止めを求める仮処分を申請した。

「メーカーに文書などで抗議しよう」などと書かれた決議文書そのものを持っていたこともあり、事態はモノタロウに有利な方向に動いた。

国内調達が難しくなり
海外に活路を求めた

 しかしそれで工具商は手のひらを返したわけではなく、モノタロウに引き続き敵対心を持ち続けた。それを知るメーカーや卸売会社がモノタロウへの商品提供を渋ったため、調達先を海外に求めなければならなくなったのだ。

 行き先は台湾、韓国、中国。毎週日曜日の夜カ月曜日の早朝に大阪を発ち、現地を木曜日に出て帰国するというのが瀬戸と室大二郎(編集部注/トラスコ中山の営業所長から2001年に入社し、商品調達と仕入れ先開拓を担当)のだいたいのスケジュールだった。室は帰国翌日の金曜日から、旅立つ日曜日の間に、持ち帰ってきた商品を載せたチラシを作ったり、次の出張先でどんな行動をするか下調べをしたりする生活を送った。入社当時には思いもしなかった生活である。

 2001年夏に入社した室は、トラスコ時代に習った「敵の敵は味方作戦」でモノタロウに商品を売ってくれる卸売業者やメーカーを探した。ゼロからのスタートだったから相当な苦労が伴ったと思いきや、本人は「大したもんじゃないですよ」と笑う。「飛び込み営業みたいなところがありましたけれど、頼む先は目星が付いていたし、だいたい取引に応じてくれました。打率は7割ぐらいでしたかね」。

 しかし今度の海外調達で経験、勘は通用しない。すべて手探りだ。取引先開拓は冒険に等しかった。

 数ある冒険譚の中で瀬戸や室にとって印象深いのは、切削工具の先端に取り付けられるチップだという。

 機械工具商にとってチップは重要商品である。切削工具にはさまざまな種類があって、ユーザーは頻繁にチップを取り換える。利益率が高いから、この商品群に関して国内の流通業者はより保守的で、安売りをするモノタロウにはなかなか入り込む余地がなかった。