**現場で起きている問題

「うーん、今の社長に対しては、会長の時ほどの忠誠を示しているようには思えないな」

「ふーん、そうなんですか」守下は食後のお茶を飲みながら言った。

 高山なりに、阿久津専務が今の管理本部のポジションにいる理由を理解できた。

「で、阿久津専務は、人事部長として入社したばかりの添谷野さんを使って、その制度を導入した場合に、どのくらいの売上アップが見込めて人件費も抑えられるかなどの試算をさせて、経営会議で通したんだ。まあ、阿久津専務が、自分のやりたいことありきでつくらせた数字だから、ほとんどがあと付けの理屈で組み立てた作文なんだろうけどな」

 沼口は、お茶を手にしながら話を続けた。

「添谷野さんにとっても、会社でいいところを見せるチャンスだったわけだ。あの添谷野さんって、外資系企業の人事部にいたとかで、パワーポイントで派手な資料を作ったり、かっこいいカタカナ言葉を使いまくるんだ。また今の社長は、そういうの大好きなんだよなあ」

「へー、僕、まだパワポができないんです。すごいですね」

 高山は、自分もパワポはほとんどできないなと思いつつ、そのことは黙っていた。

「確かに今導入されている、個人インセンティブの制度については、問題視する声はよく聞くな」

「実際、販売の現場にいると、いろいろな問題が起きているよ」

 高山が、お茶を片手に話をはじめた。