大人の発達障害の人たちの中にも、強迫症状や依存症に悩む人たちが少なくない。

 そんな人たちが「脱ひきこもり」して、自ら生活する術を身に付けるために、周囲はどう支援していけばいいのか。

 そうした発達障害の支援の在り方を考える、9月13日、東京都世田谷区主催の『発達障害の支援のあり方を考えるシンポジウム』が、区内の成城ホールで開かれた。

 その第1部「脱ひきこもり!ゆるサバイバル術」のパネルディスカッションの中で、こうした話題が取り上げられた。

「脱ひきこもり」には
“褒める”がカギ

 今回パネリストを務めた発達障害当事者の家族であり、NPO法人「東京都自閉症協会」理事長の今井忠氏が、この問題に取り組み始めたきっかけは、長い間、製造業の会社に勤めていたことだ。

 在職中、管理職としてマネジメントの任に就いたとたん、期待した行動がとれなくなる人たちが周囲に一定程度いた。そこで、発達障害のことを勉強し、いかに雇用管理していくかを模索してきた。

 今井氏は、「発達障害の診断名がどうとかいうことよりも、発達障害の人に関わってきたことで得られた、人間をどの角度から見ていくのかの人間観のほうが有益」だとして、こう提案する。

「こういう行動をしてもらいたいと周りが思っていることと違う行動をとったとき、本人なりの理由がある。外的な状況に対して、本人がどう捉え、どういうアクションをとるのかの相互関係を見ていくことが本人を活かしていくうえで有効なのではないか。ちょっと変わってると思っても、そうかもしれないと思って対応して、損することはない」

 その後、会場からパネリストへ「自己肯定感を高めながら、サバイバル術としてのスキルをどう身に付ければいいでしょうか?」という質問が紹介された。今回の「脱ひきこもり!ゆるサバイバル術」のメインテーマだ。

 パネリストの都立小児総合医療センター副院長の田中哲氏が、こう答えた。

「子どもの場合、いいところを見つけて褒める。大人の場合でも同じなんだと思う。成人は、自分を自分で褒めることができる。自分のいいところを見つけて、自分で自分にご褒美を出す。あるいは、自分のいいところを人にアピールして、自慢しているみたいでも、人に認めてもらえるようになるということは、肯定感を高めながら、サバイバルしていくことにつながっていくのではないか」