子どもの頃、自分が何をされたかわからないうちに受けた性的虐待は、いくつになったら認識できるのだろう。

 幼いうちに発症したPTSD(心的外傷ストレス障害)などの精神的症状と、性的虐待などとのつながりを自覚するまでには、いったいどれくらいの時間がかかるのだろうか。

 そんな2つの“つながり”を巡る訴訟が、いま行われている。
 訴えを起こしている被害者は、北海道に住む30代の女性。

 3歳10ヵ月から8歳10ヵ月までの5年間にわたり、当時30歳代の親族の男性から繰り返し受けた性的虐待によって、PTSD(心的外傷ストレス障害)などを発症。2年前にPTSDであることを知った女性が、最後の被害を受けてから20年以上経過した2011年4月に、加害者である60歳代の男性を提訴した。

 しかし、釧路地裁の河本昌子裁判長は今年4月、男性による性的虐待行為や姦淫行為の事実を認め、PTSDなどとの因果関係も肯定しながら「すでに20年の除斥期間が経過している」として、訴えを却下した。

 女性は9月6日、親族の男性に対して1審の請求額を上回る4100万円余りの損害賠償を求めて札幌高裁に控訴。5日に開かれる第2回口頭弁論では、今後の証人尋問や証拠取り調べに対する判断が示される見込みだ。

30代親族男性(当時)が行った
あまりに酷い性的虐待の事実

 1審の判決が認定した被害事実の概要は、次の通り。

 1978年1月上旬、被告は祖父母宅において、当時3歳10ヵ月の原告に対し、体をなで回すなどの行為をした。

 以来、被告は祖父母宅において、毎年1月上旬と8月の2回、原告へのわいせつ行為を繰り返し、行為をだんだんとエスカレートさせていく。