近年、骨保護作用のみならず、うつ病や精神疾患の抑制、心疾患の発症予防など、いくつかの作用が報告されている「ビタミンD」。本稿でも紹介してきたが、2013年末、これに「脳保護」が加わった。米ケンタッキー大学の研究者らの報告から。

 研究グループは中年ラットを3グループに分け、ビタミンDの含有量を低~中~高の3段階に調整した餌を4~5カ月間与え続けた。その後、感情の形成と処理、学習と記憶に関わる脳の部位の損傷度を確認している。

 その結果、低ビタミンD食を与えられていたラット群は、他の2群と比べて脳細胞を酸化ストレスから守る機構に破綻が生じ、脳タンパクの損傷が多数認められた。研究者は「ビタミンDの不足によって、中年から高齢成人の脳老化と認知機能低下が促進されている可能性がある」とし、「脳を保護するには、ビタミンDが豊富な食品やビタミンDのサプリを摂り、1日10~15分は日光浴をすること」を推奨している。日光浴というのは、ビタミンDは皮膚表面のコレステロールに紫外線が当たることで生成できるから。

 これまでの研究で、ビタミンDの作用には人種差があることが解っている。例えば、心血管疾患を抑制する効果は、白人や中国人(東アジア人)では高く、黒人やヒスパニックでは効果がほとんど認められない。まして今回の対象はラット。安易に人に当てはめるのは躊躇われるが、もともとビタミンDの「健康作用」は日本人との相性がよい。骨・脳・心臓保護のために目安量を摂りたい。

 ちなみに、日光浴だけで1日の目安量を生成するとなると、冬場の日本なら晴天の関東で20~30分、北海道では1時間半ほどが必要だ。緯度が高くなると紫外線量は減少するわけだが、緯度が低くても雪曇りが多い日本海側はちょっと厳しい。やはり、冬場は食事やサプリで補うのがいい。日本の成人男性のビタミンD摂取目安量は1日当たり5.5マイクログラム。上限量は約10倍の1日50マイクログラムである。

 ビタミンDを豊富に含む冬の食材は鮭や鱒、椎茸などキノコ類。熱々の石狩鍋が美味しそうだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

週刊ダイヤモンド