ひと昔前まで高齢女性の病気とされてきた骨粗鬆症(こつそしょうしょう)。男性の骨量が多いのに加え、女性より短命なことも一因だろう。しかし男性の寿命が延びるにつれ、患者数が増加してきた。現在、日本の男性骨粗鬆症患者は300万人。女性が閉経時期を境に一気に骨量が減少するのに対し、男性は40代からじわじわ骨量が減り続ける。「閉経後骨粗鬆症」とは違って注意するきっかけがないだけに、意識して予防に努める必要がある。

 先日、米国内分泌学会は男性版の骨粗鬆症管理ガイドラインを発行。50~69歳の男性では「50歳以降の骨折経験、喫煙、低BMI(日本はBMI18.5未満が低体重)などリスク要因があれば、定期的な骨量検査」を推奨している。また、70歳以上のすべての男性とリスクを持つ若年層は、カルシウムやビタミンDのサプリメントを摂るように勧めている。

 一方、日本のガイドラインで男性骨粗鬆症に言及されたのは、2000年。最新の「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン(11年版)」では、男女を問わず50歳以降にほんのちょっとの力での「病的な骨折」が認められた場合は、骨粗鬆症と診断した上で薬物療法を検討するよう記載がされた。

 数少ない男性骨粗鬆症の研究報告をひもといてみると、骨密度が若年成人の80%以上の「正常」レベルでも大腿部骨折を起こすリスクが高いことが特徴。骨量というよりは、骨の鉄筋構造に相当するコラーゲンの酸化による「骨質」の劣化が原因とみられている。骨質からの治療アプローチはまだ研究途上だが、前述のビタミンDと併せてビタミンKを摂ることで骨質改善効果が期待できるようだ。ビタミンKを含む食品では納豆、ホウレンソウなど緑黄色野菜が有名どころ。夫婦そろって食事に取り入れよう。

 また、身体活動の減少は骨粗鬆症リスクになるため、骨に体重をしっかりかける運動──骨量低下予防効果が証明されているサッカーやバスケットボール、それが無理なら長めのウオーキング──を続けるとよい。普段の生活では歩幅を広くとり、速歩を心がけると適度な負荷になる。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

週刊ダイヤモンド