ベンチャー企業の経営者として実務に携わり、マッキンゼー&カンパニーのコンサルタントとして経営を俯瞰し、オックスフォード大学で学問を修めた琴坂将広氏。『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)の出版を記念して、新進気鋭の経営学者が、身近な事例を交えながら、経営学のおもしろさと奥深さを伝える。連載は全15回を予定。

「経営学とは何か」の答えは1つではない

「経営学とは何か?」という問いは、一生問い続けることができるほど奥深いものです。たとえ1つの答えが見えたとしても、別の答えの存在に気づかされることがあるような、永遠に続く問いだと言ってもいいでしょう。

 これはすなわち、「人間とは何か」であったり、「国家とは何か」という問いに近いとも言えます。人間が創りだした概念や、人間の行動というものの複雑性は、唯一無二の絶対的な事実をなかなか提示してくれません。

 さらに、経営学には、社会科学の研究領域としての経営学と、経営という行為の実践理論としての経営学という二面性が存在します。

 経営学はすなわち、一方では、他の社会科学と同様に、人間社会の構造と動態を説明し得る普遍的な理論を探求します。そして同時に、経営という行為を行う組織と個人に対して、実学として実践に資する知識と考え方を提供しなければならないのです。

 この二面性ゆえに、経営学が「役に立たない」「二流の学問である」という誤解を受けやすいということは、『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)の第1章で述べました。

 では、経営学とはどういうものなのでしょうか。

 今回もブログのように、とくに社会科学である経営学と、自然科学の違いについて思うところを書かせていただきます。