先天的な才能より
後天的な「環境」が大事
羽生 私が将棋に夢中になれた理由は2つの環境が大きかったと思います。1つは、たまたま教えてくれる人がいたということ。両親は将棋をあまりやりませんでしたが、友達が教えてくれました。将棋を知るきっかけがあったということです。
もう1つは、続ける場所があったということ。近くに将棋道場がなければ、おそらく(将棋を)続けることはなかったと思います。
将棋に限らず、どんな才能でも、たとえ先天的なものがあっても、それを見出し、伸ばす環境がなければ萌芽の機会さえないかもしれません。そういう意味でも環境、「場」というのは非常に大きいと思います。そう考えると、先天的なものよりも、後天的なものの影響のほうが大きいと感じます。
私の場合も、きっかけとして、先ほどの2つがなければ、将棋を続けることも、プロになることもおそらくなかったと思うので。そこは巡り合わせの良さを感じています。
長谷川 将棋道場の環境的に良かった点はどこですか。
羽生 子どもが多かったことですね。子どもが多いということは、自分にとっての「学校以外の遊び場の1つ」という感じだったんです。将棋道場が。非常に通いやすい雰囲気だったということはありました。子どもが居やすい場所だったんです。
長谷川 親御さんからは、「楽しんでやってみなさい」とか「始めたなら続けなさい」などと言われたりしましたか。
羽生 そういったことは一切ありませんでした。そもそも、親の目的は「週末の買い物」だったりしますし。だから将棋道場やデパートで行われる子ども将棋大会なども、それほどじっくり見てはいなかったと思います。将棋が終わったら迎えに来るという感じでした。
長谷川 なるほど、親の期待が一切なかった状態とも言えますね。
羽生 そうかもしれません。