日本人独特の文化価値観が労働偏重につながって生み出した「国民総残業社会」。今日、そのしわ寄せが、特に女性に重くのしかかっています。前編に引き続き、ドイツ人のAさんとインド人のBさん2人の対話を通じて、日本が真に“女性が輝く社会”になるための道筋を探っていきます。

HOW(やり方)にこだわる
文化価値観が長時間労働につながる

Aさん「日本人の長時間労働の原因の1つに、HOW(やり方)に固執する文化価値観もあると思う」

Bさん「そういえば、日本人に仕事をお願いした時、彼らは、“WHY――なぜ、何のためにやるのか?”よりも、“HOW――どうやるのか?”をえらく気にしていたよ。どの様式にどう書いて誰にどうやってて提出したらいいのか、と何回も聞いてきた」

Aさん「逆に、日本人が人に何かをお願いする時は、WHYがなくてHOWだけ説明がある場合が多い」

Bさん「そこで頼んできた相手に、WHY?と聞くと、答えが返ってこないか、曖昧だったりするんだよね」

Aさん「それはたぶん、その人自身も知らないか、考えたこともないからだろうね」

Bさん「もしかしたら……上司からWHYの説明なしにこれを頼まれた。その上司も、そのまた上司からWHYの説明なしに頼まれた……つまり指示の流れの中で、誰もWHYを深く考えずに、HOWだけがくっついてきた可能性もあるね」

Aさん「いずれにせよ、日本人は、HOW(やり方)と、前述した組織のルール、しかも細かいものを必要とする。そして、それに従おうとする」

Bさん「だから日本の組織では、細かい業務マニュアルが多くなり、それを作ったり改訂したりするのに莫大な労力、時間、コストがかかるんだね」

Aさん「それで全体の業務効率が良くなればいいが、問題は、マニュアルが劣化していることだよ。世の中の激変に対応しきれていない。時代錯誤のやり方が残っていたり、業務の現実に即した新しいやり方が加わっていないことがある」