
米国経済、それでも減速するはずだが、
株価堅調の背景にマクロ政策の動向
トランプ政権は、日本を含め各国に対し新たな相互関税率と実施猶予期限を一方的に通知したが、米国の関税政策が最終的にどのような形で決着するのか、その影響が米国経済や物価にどう波及するのか、そして世界経済全体の先行きもまだ大きな不確実性を抱えている。
6月までのデータを見る限り、関税引き上げの影響は一部見られ始めているものの、関税引き上げ分の価格転嫁の目立った動きはなく、米国経済はまだおおむね堅調さを維持しているようだ。この状況を見て、関税引き上げのコストは、グローバル・サプライチェーンと米国内のサプライヤーのコスト削減や利益圧縮によって広く薄く吸収される結果、意外に小さなものにとどまるのではとの楽観的な見方も強まりつつある。
一方で、関税の徴収で財政収支が改善したり、価格転嫁が広がり消費などが落ち込んだりすることで景気減速は避けられないとの見方も根強い。財政赤字の削減はマクロ経済的には一定のデフレ効果を持つ。海外メーカーなどの価格維持の戦略もいずれ限界になり、今後の米国の経済成長はある程度、下押しされてくるというわけだ。
しかし、米国株式市場は、そうした懸念を無視するかのように、このところ高値圏での動きが続いている。さらに言えば、トランプ関税によって米国以上にマイナスの影響を受けることになる米国外の国々でも、堅調な株価の推移が同様に見られている。
4月に相互関税が発表された時点で、市場はすでに経済について最悪の事態をいったん想定して大きな下落を経験しているので、今後の多少の経済成長鈍化は想定の範囲内という見方はある。
とはいえ、そうはいっても先行き、何がしかの成長鈍化が予想される中で株価が高値を更新していく姿に、違和感を持つ市場参加者も少なくないはずだ。
この1カ月ほどのグローバルな株価上昇が意味するところは、一体何なのだろうか? その背景には、世界的なマクロ経済政策の動きが影響していると見るべきだろう。