外資系での経験を
日本企業の変革に活かす

 外資系企業で働く人は、一般的に「一匹オオカミ」的で、多くが「金の亡者」と思われているかもしれません。でも、それは一部の極端な例です。外資系で働く日本人のほとんどは普通の日本人、より正確に言えば、好むと好まざるとにかかわらず、日本人であることを認識させられる日々を過ごしているのです。

 かくいう私も、外資系で働きながら日本人の心を忘れていない自分を“発見”すると、誇らしく思ったものです。例えば、評価の時期になると、外国人スタッフは、「自分がいかに素晴らしいか」を、誇大とも思えるほどの表現をもって強く主張します。それに対して、「勝ち負け」より「正しいこと」をすべきという日本の教育を受けた私は、「これは達成できたけど、これはできなかった」という正直な申告しかしませんでした。

外資系企業出身者の危機感<br />――日本についての「知識」がなければ<br />“根無し草”になる2011年、アリゾナでのリーダーシップ研修。いつも日本人は1人。否応なしに日本代表としての言動を意識した(前列右から2人目が筆者)

 このような私の態度は、欧米社会では弱気に映るのでしょう。それまで強気な自己主張しか見たことのない外国人の上司などは、私の「正直な申告」に最初は面食らったようですが、すぐに理解し、かえって信頼してもらえるようになりました。

 先述したように、日本企業がこれから世界で互角に戦っていくためには、さまざまな面での変革が必要です。とはいえ、一企業に身を投じた私に何ができるのでしょうか。

 これについては、少なくとも次の3つの点で寄与できるはずです。

 第1に、ベーシックですが、外国語(主に英語)で多様な背景を持つ外国人と働いてきたという経験です。日常的にはメールや書類の書き方、会議の進め方です。大がかりなものでは、グローバルプロジェクトの設定の仕方や進め方で経験を活かせます。特に後者は、「あ、うん」の呼吸で、しかも母国語である日本語で仕事を進めることのできる日本の環境で働いていただけではけっして得ることのできない経験です。

 第2に、日本的・日本中心ではない視点や考え方を持っていることです。例えば、日本人同士であれば問題なく通じ合う企業文化や商慣習が、グローバル市場や外国人には、理解しにくかったり大きな問題となったりする可能性をはらんでいるケースが多々あります。違う視点や考え方がぶつかり合う現場経験を重ねてきた外資出身者は、このようなリスクにいち早く対応できるのです。

 そして最後に、グローバルを前提とした仕組みの中で仕事をしてきた経験です。例えば、人事制度や評価、財務管理や情報システムなどについて、現状の日本の仕組みをいかにグローバルに適用するかではなく、最初から全体最適を考えて仕組みを設計することができます。

 日系企業の海外赴任者も、われわれ外資系出身者と同じような経験を積んでいるはずですから、第1のポイントは経験することができるでしょう。しかし、第2、第3については難しいと思います。