インターネット上で、ブランド品のバッグや時計などを担保にして、おカネを借りたい人とおカネを貸したい人を結びつけるオークションサイト「しちふくじん」が今冬にスタートする。

 このサイトはネットを利用した新しい質屋サービス。本邦初だ。取引方法は、借り手から担保を受け取り、プロが査定した後にサイト上でオークションにかける。資金の出し手は気に入った担保に入札し、落札したらおカネを貸し出す。その後、返済が行なわれれば資金の出し手は収益(年率20%)を受け取り、もし、返済が滞ったとしても担保が手に入るという仕組みだという。

 資金の出し手は、返済が滞ったとしても担保が手に入るため「リスクは低い」というのが売り。ただし、送られてきた担保の価値が出した金額に見合うのかどうかは必ずしも定かではない。

 一方の借り手はどうか。担保があるため、複数の借り入れがあっても借り手になれる。また、通常の質屋では、質流れになった品物は店頭か業界内の流通網で売るしかないため査定額は低く抑えられるが、しちふくじんでは査定後にネットオークションにかかる分、評価額は競り上がる。

 もっとも、一般のネットオークションで売った方が評価額はさらに高くなる。だが、「本当は品物を手放したくない人が多い」(運営会社のハッピーマーケットの若山新・営業統括本部長)ため、「おカネを返しさえすれば品物が返ってくる」というのが、この質屋システムのアピールポイントだ。

 だが、このスキームに法的な問題はないのか。金融法に詳しい弁護士によれば、通常の質屋と同様に、金利の問題があるという。

 現状、質屋は月利3~8%(年利換算すると36~96%)で貸し出すことが多い。これは、質屋営業法が出資法の上限金利29.2%を109.5%に読み替えるという“特例”を認めているためだ。その根拠は、担保の保管料や保険料などが必要になるためとされている。
 
 だが本来の上限金利は、利息制限法の金利(10万円未満は20%、10~100万円は18%、100万円以上は15%)である。つまり、質屋も消費者金融と同様に、利息制限法を上回った金利はグレーゾーン金利となり、過払い金返還の対象となるのだ。

 また、現在は利息制限法に「超過分を任意に支払った場合は返還請求できない」という条文があるが、貸金業法の改正によって遅くとも2010年6月には撤廃される。そのため、グレーゾーン金利に過払い金返還の逃げ道はなくなる。

 じつは、しちふくじんが借り手から受け取る金利は、通常の質屋より少し低い程度。つまり、グレーゾーン金利帯のため過払い金返還の対象となる。これに対して運営会社サイドは、「金利などで社会的問題が発生するのであれば、スキームを変更して対応する」(若山氏)考えだという。だがそうなれば、ビジネスモデルの組み直しを迫られることになる。
  
 確かにしちふくじんは、これまでにない新しいサービス。だが現状では、不安定な要素を孕んでいると言わざるを得ない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 藤田章夫)