在宅医療の課題として挙げられる要素の多くは、異なる専門家同士の「連携」だが、祐ホームクリニックでは、その大半をクリアしている。同クリニックの医師は、以前から、自分が手術を担当した患者の自宅を訪問し、善意で様子を見に行っていた。クリニックでは、「たとえ、診療報酬の点数にはならなくても、患者さんのためになることは積極的にやっていく雰囲気」(園田)であり、患者や家族の求めに応じて、実行している。一般的に、医療は、ニーズと可能なサービスにずれが大きいとされるが、こういう話を聞いていると「規制を超えてニーズに合ったサービスが構築されていくではないか」と思えてくる。

 東京で在宅医療を始めた翌2011年5月、武藤は一般社団法人高齢者先進国モデル構想会議を作った。2カ月前に起きた東日本大震災を高齢社会の縮図と捉え、超高齢化社会の課題が被災地で一気に凝縮して現れている状況に危機感を覚え、震災の翌月、4月に被災地支援チームを編成し、支援活動を始めた。それが、石巻での在宅医療支援につながっている。

石巻には日本の未来が
凝縮されている

 石巻で在宅医療を始めた時「ここは日本の未来の縮図だ」と武藤は思った。震災により、高齢化が進むこの街で高齢者が幸せに暮らすこと。それは厳しいとか、難しいと表現されるが、武藤と一緒に働く人々からすれば「越えるべき壁のひとつ」にすぎないのだろう。

 高齢先進国モデル構想会議は、次のような目的を掲げている。

「私たちは、人の尊厳ある人生の全うを支え、豊かな老いを実現できる社会システムの構築に取り組みます。それにより、人々が希望ある未来を思い描き、安心して年を重ねることができる社会づくり、そして次世代によりよい社会を残そうとする社会潮流の創造を目指します」。

 そのために、高齢者をコミュニティで支える包括的なサービスモデルの構築を目指し、研究、啓発、広報や実証実験を行っている。