ポーターの理論の実践には「手段の考案」が不可欠

 ビジネスンのあらゆるシーンで「攻撃」と「防御」は、永遠のテーマと言える戦いです。「参入障壁となっている主要因を無力化するか切り離す」との指摘は至言で、通販で購入される商品が増える中、地方都市では物販ではなく、カフェやレストラン、フィットネスジムなどの体験型ビジネスが盛んであることも、その一例と言えるでしょう。

 すでに飽和状態の業界に、低コストで参入する際にも、最近は工夫が凝らされています。24時間営業のレンタカー店にカラオケルームを併設するなどは、従業員の管理コストを下げるために有効な上に、スタッフが待機している時間を利益に転換しています。

 効果的に参入できた場合「その業界の参入障壁をさらに高めて支配する」ことも重要です。自社が空けた風穴を塞ぎ、新たな均衡をつくり上げて有利なまま支配するためです。

 ユニクロはファッション業界で製造型小売業の業態(SPA方式)を導入し成功したのち、全国の主要な商業施設や駅に出店し、機能性商品の開発や大量のCMでブランド化を成し遂げました。同社が迅速に障壁を高めたことで、後発企業は単に同じことをするだけでは、SPA方式を導入しても衣料品チェーンとして全国展開できなくなったのです。

※この記事は、書籍『戦略の教室』の原稿を一部加筆・修正して掲載しています。


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著者紹介

鈴木博毅(すずき・ひろき)
1972年生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒。ビジネス戦略、組織論、マーケテイングコンサルタント。MPS Consulting代表。貿易商社にてカナダ・豪州の資源輸入業務に従事。その後国内コンサルティング会社に勤務し、2001年に独立。戦略論や企業史を分析し、新たなイノベーションのヒントを探ることをライフワークとしている。日本的組織論の名著『失敗の本質』をわかりやすく現代ビジネスマン向けにエッセンス化した『「超」入門 失敗の本質』(ダイヤモンド社)は、戦略とイノベーションの構造を新たな切り口で学べる書籍として14万部を超えるベストセラーとなる。その他の著書に『企業変革 入門』『ガンダムが教えてくれたこと』『シャアに学ぶ逆境に克つ仕事術』(すべて日本実業出版社) 、『空気を変えて思いどおりに人を動かす方法』(マガジンハウス社)などがある。