5つの競争要因で、ロブスター漁の逆転方法を考える
では、ロブスター漁において大手企業側が勝つためには、どうすればよかったのか。ポーターはこのような場合、「参入障壁となっている主要因を無力化するか切り離す」ことができるか否かが、勝負の分かれ目だと主張しています。
零細漁民の低価格化という参入障壁に留意して、ここで攻撃方法を考察してみましょう。
(1)「新規参入」が容易になる状態をつくり上げる
(例)レストランチェーンをつくるか買収して、卸機能を自社で行う。
(2)「代替品」として既存品に置き換わる
(例)複数エリアからの仕入れ対応を強化する。
(3)「供給業者」と他社の関係を破壊する
(例)漁業エリアの一部を買い取る、大規模な養殖事業化など(供給元は海なので)。
(4)「買い手」を新たな商品に誘導する
(例)レストランチェーンであれば、品質管理等によるブランド化と調理法を向上させる。
(5)「競争業者」の優位性を破壊する
(例)零細漁業者側が、低価格への柔軟性がある場合、価格で競争する立場に参入せず、むしろ低価格を業者間で競わせて得をする立場を強化する。
零細漁業側が使える参入障壁を、無力化するか切り離す状態で大手側が攻撃を行えば、相手は一方的に支配される側に回らざるをえません。ポーターが描いた参入障壁への理解の深さは、そのまま競争に勝利する道へと通じているのです。