幼児には形容詞が一番学びづらい

子どもたちはまず、名詞から憶え始めます。「マンマ」や「ワンワン」、「ママ」は初語(初めて話す言葉)の不動のレギュラーです。

 でも面白いことに、基本は一般名詞が先で、固有名詞が後だそうです。固有名詞は「特定のモノにだけ紐づく言葉」なので憶えやすいかとも思いますが、子どもは、より使い回しの効く言葉の習得を優先するのです。

次に憶えるのが動詞です。行動や状況を示す言葉の習得は、形がないせいもあって簡単ではないのです。そして一番最後が形容詞(や形容動詞)です。「たかい」「ひくい」「あかい」「しろい」「あかるい」「くらい」「おおい」「すくない」が、子どもには難しいのです。

 なぜでしょう? それは形容詞がすべて「抽象的」でかつ「相対的」なものだからです。「走る」と「歩く」は別の種類の動作であって、見る人によって変わることはありません。中間的な動作もあるかもしれませんが、基本、絶対的なものなのです。

 でも形容詞は、見る人によって同じものでもまったく違って表現されます。身長175cmの男性は日本人平均よりは「高い」のですが、平均身長180cmのドイツ人男性から見れば「低い」となります。でも昔、私の上司だったドイツ人男性は身長187cmでしたが、彼の兄弟の中では一番背が低く「Little Peter(チビのピーター)」と呼ばれていたとか。

形容詞は、定性的というだけではなく、そもそも視点(誰にとって)によって逆にすらなりうる、危険な代物なのです。なのに、世界には形容詞が溢れ、それはビジネス界にも広く浸透しています。