自民党が衆院選・参院選で連続の圧勝を収めた後、党内の族議員跋扈は激しさを増した。アベノミクスの実行を担った族議員が、さまざまな業界の支持が自民党の勝利に貢献したことを声高にアピールし、それぞれの「既得権の維持・拡大」を主張したからである。しかし、公共事業や円安の恩恵を受けて自民党を支持した業界は、業績悪化に苦しむ斜陽産業だ。つまり選挙の勝利で、成長戦略によって既得権を切られる族議員・業界が膨れ上がってきているのだ。

「軽量」な党執行部に、族議員・業界を抑える力量はなかった。そこで、当選10回のベテランである二階俊博総務会長代理が、党に対する「重石」の役割を期待されて、総務会長に就任することとなった。ただ、確かに重石になるだろうが、どういう方向性で重石になるかが問題だ。

 二階新総務会長は、約200兆円の大規模公共事業による「国土強靭化」を唱える族議員のグループのリーダーである。「日本のインフラ整備は遅れており200兆円は荒唐無稽な数字ではない」「古い公共事業がどうとか、いつまでも世間に生意気なことを言わせていてはだめだ」と発言し続けてきた二階新総務会長の指揮下では、総務会は族議員を抑える「ガス抜き」の舞台とならないだろう。むしろ、総務会はますます族議員が跋扈する場となる可能性が高い。

 それに対して、幹事長には谷垣禎一前総裁が起用された。谷垣新幹事長は、野党時代に党総裁として、民主党政権と「社会保障と税の一体改革」に取り組み、民主党、自民党、公明党の10%への消費増税の「三党合意」をまとめた(第44回を参照のこと)。現在でも、安倍政権が年内に判断する消費税の引き上げについて「10%にもっていけない状況になると、アベノミクスが成功しなかったとみられる」と発言し、予定通りの税率引き上げを主張している。財政再建の実現に強い信念を持つ政治家である。

「国土強靭化」の二階新総務会長と「財政再建」の谷垣新幹事長では、一見「水と油」のように見えるが、実際はそういうわけではない。二階新総務会長の「国土強靭化」という積極的財政出動策は、10%への消費増税を見込んだものである。消費増税の必要性については、二階新総務会長と谷垣新幹事長は考えが一致しているということだ。

 また、この連載では、アベノミクスによる財政出動を単純に財務省と財政再建派の政治家の敗北とはいえないと指摘した(第82回を参照のこと)。安倍首相が2014年4月に、当初の予定通り消費税率を5%から8%に引き上げたのは、アベノミクスによる好況感の広がりだったからだ。