異なる利益をどのように調整するべきか

 ある会社でこんなことがありました。タバコを吸わない社員が会社に「タバコを吸う人の給料を下げるべきだ!」と訴えたのです。「タバコを吸う人は個人的な楽しみのために勤務時間を無駄にしている。その分、タバコを吸わない人がカバーしているのだから給料を減らすのは当然」というのがこの人の主張です。タバコでよっぽど嫌な思いをしたのでしょう。

 なるほど、この人の主張には理屈があります。しかし、ただ、給料を減らすだけでは、単なる「喫煙者叩き」に終わります。要は、タバコを吸わない人が迷惑を被ることなく気持ちよく仕事ができればいいわけです。

 その目的のためなら、①会社はちゃんと喫煙施設を整備すること、②タバコを吸いたい人は休憩時間に喫煙所で吸うというルールを作ること、シンプルですが、こうしたことが合理的なのでないでしょうか。

 ただ、実際に、会社がどんな解決策を選ぶかは「バランス感覚」も加わったものとなるでしょう。ここでいう「バランス感覚」とは、「異なる利益の間の調整」とでもいうべきものです。

 上の結論について、「タバコを吸う人」と「タバコを吸わない人」との間ではもういいでしょう。しかし、「会社の利益」の視点がありません。組合の主張ならいいのですが、会社の総務課の案として考えるなら、会社のことも考えてあげなくてはいけません。というのは、会社の経営状態がたいへん厳しい場合には、喫煙施設の整備どころではないかもしれません。そもそも「健康企業」のイメージを大事にする会社だったとしたら、「この際、会社の敷地内での喫煙は我慢してもらおうか」ということになるかもしれないからです。

 こうしたいろいろな要素を考えながら、落ち着くべきところへ導く能力が「リーガルマインド」といえるでしょう。
 


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