法律を学ぶ意義とは?
リーガルマインドの正体についてお話しする前に、まず法律を学ぶ意義について知っておいていただきたいと思います。「法律を学ぶことにはどんな意義があるのですか?」このシンプルな問いかけに、みなさんはどう答えますか?
「法律を学ぶ」というとどんな作業を想像するでしょうか? 長くて難しい条文と格闘したり、聞き慣れない法律用語を暗記したり、といった「やっかい」な作業を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
しかし、それは法律を学ぶことのほんの一部でしかありません。単に知識を身につけただけでは法律を理解したとは言えません。法律を学ぶことの本当の意味は、法律の読み解きを通じて、法的な考え方や感覚、つまり「リーガルマインド」を身につけることにあるのです。つまり、先ほどのとてもシンプルな問いかけには、「リーガルマインドを養うことができる」と答えることができます。
リーガルマインドはどんな能力なのか
では、「リーガルマインド」の正体とは一体何でしょうか。リーガルマインドとは「物事の正義や公平のストライクゾーンの感覚」であると説明しました。この感覚を身につけられれば、物事を筋道立てて考えることができますし、多くの人が支持する結論を導くことができます。
「物事の正義や公平のストライクゾーンの感覚」といっても、それが具体的にどんなものなのかを説明するのは簡単ではありません。なぜなら、リーガルマインドとは教えてもらうものではなく、たくさんの法律や条文を読み解くうちに自ずと身についてくる能力だからです。ある野球選手が「何百回、何千回もバッターボックスに立っていると、ストライクゾーンが自然に見えてくる」と言っていましたが、リーガルマインドを身につける過程はこれとよく似ているかもしれません。
「論理的思考」と「バランス感覚」が命
リーガルマインドは2つの能力から構成されています。ひとつは「論理的思考力」であり、もうひとつは「バランス感覚」です。たとえば、契約などでトラブルが生じた場合、双方の主張をバランスよく調整して、お互いに納得できる結論を論理的に導き出さなければなりません。つまり、「論理性とバランス感覚」がリーガルマインドの命なのです。
「論理的」といっても、それは「理屈が言える」ということではありません。いくら理屈を重ねても人の心に響かないようなら、それは「屁理屈」です。「論理的」というのは、誰もが受け入れやすい形で「AだからB」と言えることです。そのためには主張にまず「合理性」がなければなりません。