「ひみつ道具」のようなすぐ使える『行動の処方せん』
――これまでの子育て本とはどこがどう違うんですか?
これまでの子育て本は子どもを温かく包み込みましょう。子どもをほめてあげましょう。という類のものが大半です。でも、実際の臨床現場であらゆる問題を解決し続けてきた私から見ると、それらは真実ではなく、時と場合によっては害悪になるケースすらある。編集者から『世界に1つだけの子育ての教科書』と持ちかけられたとき、自然とリミッターが外れました。「本当のこと」をおもいきって書いてみよう、と思ったんです。
――センセイはよくテレビにも出演されますが、テレビと本の違いってあります?
テレビではできないけど、本だからできること――それは「本当のことを書く」ことしかないじゃないですか。テレビ局の人が取材にきて私の話を聞くと、大半の人が「こんな話は聞いたことがない。すごい!」と言うものの、ほぼ100%、私の発言は採用されない。でも、本では、テレビでボツになったことを遠慮なく書くことができる。だからお題目を並べるような子育て本ではなく、具体的な『行動の処方せん』を紹介することに力点を置きました。
――面白そうですね、『行動の処方せん』という響き~。
本書には、その場限りの「励まし」は一切ありません。困っている親に言葉だけで励まして共感してあげても、家に帰ったときに何の解決策も得ていなければ、途方に暮れてしまうでしょう。
――たしかに!
本当に困っている方に、本当に役に立つ本をつくりたかったので、ドラえもんのポケットから道具を出すようなイメージで紹介することにしました。
――「ひみつ道具」のような!
まさにそれを目指しました。一例を紹介すると、『行動の処方せん』を厳選し、
●自分から勉強する子になる法則──今日からできる11のステップ
●トイレ問題も即解決! 96%の子が3日で成功する方法
●偏食が一発で直る新技
などが入っています。
――それは面白そうです!
面白くてためになる本を目指しました。裏のキーワードは「嫌われたってイイじゃないか」かな。
「嫌われたってイイじゃないか」の意味
――そうそう。エピローグの「嫌われたってイイじゃないか」ってどういうことですか?
これが本書を貫くキーコンセプトです。最後まで読んでいただくとわかりますが、これには深いメッセージがこめられています。
――2014年の年間ベストセラー『嫌われる勇気』を思い出しますね。
アドラー心理学を描いた『嫌われる勇気』は、指針としては非常に面白いですし、アドラーの指摘はおおよそとても的を射たものだろうと思います。ただ、アドラー自身や周辺がまだ科学的な検証を行わない時代だったので、そのままここまできているんだと思います。
――子育てにも応用できるんですか?
うーん。難点は、実際の子育てにどう役に立てるかがなかなか難しいこと。だから、本書では、ドラえもんのポケットからすぐ効く武器を出すかのごとく、こういうときはこれ、という具体的なメソッドを紹介しました。
――そんな本がほしいですね。
以前、私の過去の書籍を読まれた方のレビューで、「この書籍の根底にはアドラーと類似する要素があるのでは?」という指摘を見たことがあります。私自身はアドラーを意識したことは一度もないのですが、結果として、いわば『嫌われる勇気』の子育て実践版となっているのかもしれません。