古賀 そうした現実がありながら、「縦の関係」を崩そうとしない大人たちが多いのはなぜなのでしょう? これは親や教師だけでなく、会社組織の管理職にもいえることだと思うのですが。

岸見 「縦の関係」を崩すことによって、既得権益が脅かされると思っている方は多いようです。

──既得権益?

岸見 はい。いまは上司として、また教師として、敬われている。しかし、もしも「横の関係」になってしまったら、誰からも敬われなくなる。自分の地位が脅かされてしまう。そう感じる人がいたとしても、不思議ではありません。

古賀 アドラー的にいうと、根底に劣等感があるわけですね。「ありのままの自分では誰からも大切にされない」という劣等感があるから、地位や「縦の関係」にしがみつこうとする。

岸見 そうですね。ちゃんと自己受容(ありのままの自分を受け入れること)ができている方であれば、横の関係に踏み出す勇気を持てるはずです。そして反発される方も、おそらくそれをわかっている。もしも的外れな議論だと思ったなら、感情的に反発するのではなく、理路整然と反論するか、無視するでしょう。

古賀 むしろ正論だからこそ、感情的に反発したくなるのですね。

岸見 きっとそうだと思います。

10年越しの願いが
かなった一冊

──それでは『嫌われる勇気』が刊行された1年前のことを思い出していただきたいのですが、この1年は長かったですか?

古賀 もちろん長かったです。でも正直な話、何年もかけてつくった本なので、1年という単位があまりピンとこないんですよね(笑)。

岸見 最初に会いに来てくださったのは2010年でしたから。

古賀 ええ。本のあとがきでも触れましたが、1999年にたまたま岸見先生の『アドラー心理学入門』(ベスト新書)を読んで、人生観がひっくり返るほどの衝撃を受けたんです。「なんだ、これは!」と。