今回ご紹介するのは『人を助けるすんごい仕組み――ボランティア経験のない僕が、日本最大級の支援組織をどうつくったのか』です。世界的にも評価されている日本最大級のボランティア組織「ふんばろう東日本支援プロジェクト」の代表が、プロジェクトができるまでの過程と仕組みを解説します。その内容を少しだけご紹介しましょう。
一教師が立ち上げた
震災支援プロジェクトの過程と仕組み
去る1月17日、戦後最大の都市型災害といわれた阪神・淡路大震災の発生から20年目の節目を迎えました。被災地にはこれまでに延べ138万人のボランティアがかけつけ、瓦礫の片づけや仮設住宅のお年寄りのケアなど、様々な支援をしてきました。震災が発生した1995年は、ボランティア団体が法人格を保有できるNPO法(特定非営利活動促進法)が策定されるきっかけにもなったことから「ボランティア元年」とよばれています。
そしてもうすぐ、3月11日がやってきます。あの未曽有の大震災から4年が過ぎようとしている今なお、行方不明者は約2600人にのぼり、家屋の倒壊や原発事故の影響等で自宅に戻れない避難・転居者数は23万人以上に及んでいます。
本書『人を助けるすんごい仕組み』は、ボランティアなど経験したこともなければ、プロジェクトをつくったこともなく、事業を起こしたこともない「僕」が、震災をきっかけにプロジェクトを立ち上げ、それが日本最大級のプロジェクトへと発展していく過程と仕組みを描いたものです。
「僕」すなわち西條剛央氏は、早稲田大学大学院のMBA課程で心理学と哲学を教えています。そんな一教員がいかにして大規模プロジェクトを展開できたのか。それは西條氏が「構造構成主義」という理論を体系化していたことと深く関係しています。
西條氏の学説をそのまま受け売りすると、構造構成主義は固定的な方法が役に立たないような、まったく未知の状況、変化の激しい環境において、ゼロベースでその都度有効な方法を打ち出していくための考え方です。そのエッセンスは極めてシンプルで、あらゆる事象にしなやかに対応するための考え方なのです。また、「信念対立」を解き明かす考え方でもあるため、対立に足を取られることなく、物事を建設的に前に進めていきやすくなります。本書に出てくる糸井重里氏との対談では、こんなふうに語っています。